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バカリズム、芸人志望の専門学校生に意識の低さを指摘して諦めさせた過去「何一つ自ら生み出せてない」
2015.04.07 (Tue)
2015年4月6日放送のニッポン放送系のラジオ番組『バカリズムのオールナイトニッポンGOLD』(毎週月 22:00-24:00)にて、お笑い芸人・バカリズムが、日本映画学校に入学したところ、同じくお笑い芸人志望の同級生・トクちゃんがいたと語っていた。
トクちゃんは、クラスの人気者的なポジションにいたというが、テレビで流行っているギャグや、お笑い芸人の真似事をして笑いをとる程度の様子だったそうだ。クラスの親睦会で、バカリズムはそのトクちゃんに「ネタを見て、批評して欲しい」と何度も乞われ、仕方なしに批評したところ、トクちゃんはその日以来、ギャグをクラスメイトの前でしなくなり、数ヶ月後に学校を去った、と語っていた。
番組バカリズム
![番組バカリズム [DVD]](https://ecx.images-amazon.com/images/I/51J8QzLORqL._SL200_.jpg)
バカリズム:今までの記憶を辿って行くと、学校とかで、最初の自己紹介でハシャグ奴というか、目立とうとする奴って、大体、最終学年になってる頃には、最下層にいるんですよね。何なんでしょうかね。
最初、軽く人気者になったりするのに。何なんだろうな。最初、目立とうとしたり、ちょっと強めに、男子校でヤンキーとかいる高校だったんで、アレなんですけど。最初に結構、かます奴って、後半、どパシリだったりするから。
割りと慎重にいった方が良いんですよね。だから、客観性がないってことなのかな。勇気はあるけど、それは勇気だけではなくて、空気が読めないっていうことにも繋がってくるし。長続きしないんですよね。いわゆる、一発屋で終わっちゃうというか。
俺、専門学校の時にね…僕が通ってたのは、日本映画学校っていう、俳優科と映像科があって。映像科は、映画監督になる人だったり、映画とかドラマとか、業界のスタッフさんになる人が入るんですけども。俳優科の方は、本当に俳優を目指す人、人前に立つ道を選んでくる人たちなんですけども。
だから、そういう人たちが集まってくるから、まあ比較的、人前に立ちたい、目立ちたいっていう人たちばっかりですよ。もちろん、その中にはクラスのお調子者、人気者もいたんでしょうよ。それで、僕はそんな中に入ったんですよ。
それで、入学式の翌日に、自己紹介があるんですけど、何人か目立とうとするヤツがいたんですよ。僕は、そういうの苦手だから、本当に普通に、淡々と自己紹介だけして。そんなところで目立とうとするヤツは、しょうもないヤツに決まってるって思うから。
それまでの経験もあるし。大体、最下層に行くから。目立つヤツって。まんまと居たんですよ。それで、トクちゃんっていう子なんですよね。トクちゃんは、入学式の時に、僕の隣にいたのを覚えてるんですよ。
彼は、坊主頭で爽やかな感じの。さっぱりした顔で、人当たりの良い感じですよ。それで、だいたい、会ったら好感を持たれる感じの。トクちゃんが座ってたんですよ。そういうヤツが座ってるなって思ったんですよ。
僕はもう来たばっかり、入ったばっかりで、誰も話す人いないから、隣のグループの話を黙って聞いてて。そこにグループができてて、その中心がトクちゃんだったんですよ。トクちゃんが目立って、そこを回してる感じがあったんですよ。
それで、関西弁をふんだんに使った、「ちょっと俺、面白いですよ」的な感じで、その場を和ませてたのを覚えてたんですよ。声も特徴的だったから。それで、そのトクちゃんが、入学式翌日の自己紹介で、かましてたんですよ。初っ端から。
何をやったかと言うと、自己紹介の後に、「僕はお笑いを目指してます」と。もう俺、オモロイでっせ的なノリで。その時にやり始めたのが、モノマネだったんですね。それも、さんざんテレビや色んなところで使い古された、田中邦衛さんのモノマネだったんですよ。
でも、和やかなムードにはなってたんですよ。自己紹介する人たちの中で、あんまりそういう人いなかったから。いきなり自分で率先して。勇気もいるしね。急にやったってことで、クラスも和やかになって。僕は全然笑ってないですよ。「うわ、テレビで散々、使い古されたネタを、よくそんなところでやる勇気あるな」と思ったんですよ。
でもね、お調子者だけど、悪いヤツじゃなさそうだから。特になんとも思ってなかったんですよ。それで、そこからトクちゃんは何かあるたびに、授業中…授業中って言っても、座学がないから、ダンスのレッスンや、芝居のレッスンで、割りと目立って、変な質問をしたりとか。目立ってたんですよ。
僕はその時、特に目立つこともなく、割りと地味なところで、とりあえずクラス全体の様子を伺ってたんです。誰を敵にしない方が良いのか、誰を味方にすれば良いのかってことでね。
僕は、男子校から共学に入ってきて、とりあえず、共学ってことが楽しくてしょうがなかったから、「女子と仲良くするにはどうすればいいかな」くらいの感じで、なんとなく全体を伺ってたんですよ。とりあえず、時間は3年間ありますから。3年間の中で、いかにベストポジションをとるかが重要ですから。
でも、トクちゃんは最初からガンガン、ガンガンやってて。ただ、面白くはなかったんですよ。基本的にただのお調子者ですよ。テレビでやってる、流行っているギャグをやったりとか。例の、田中邦衛さんのモノマネをやったりとか。それと同レベルくらいの別の芸能人の使い古されたモノマネをしたり。それでも、割りと、クラスを明るくしてたんですよ。トクちゃんは、クラスのなんとなく中心にいたんです。
それで、そんなある時、ちょっとずつ仲良くなり始めたくらいの時に、クラスの中で、食事会が行われたんです。それは、クラスの親睦を深めるために。僕もそこに出席して。僕も、多少、その辺の人たちと、徐々に仲良くなり始めで。僕もお笑いをやりたいって意志はその辺の中で明らかにしてて。なんとなく、「コイツ、ちょっとオモシロそうなヤツだよね」って雰囲気に徐々になりつつあって。
それで、さっそくその食事会の中で、ある程度、場が盛り上がってきた中で、トクちゃんが僕に近づいてきたんですよ。同じ、お笑いを目指してる人が少なかったから。その当時は、僕とトクちゃんくらいだから、話しかけてきたんです。
トクちゃんは良い人だから。僕も、面白いとは思わなかったけど、好感は持ってたから。それで、トクちゃんが話しかけてきたんですね。「お笑い、やりたいんやろ?ヒデくん」って。「僕もいつか、芸人になれればなって、思ってるんだけど」って。
「俺も、めっちゃお笑い好きやねん」って感じで。「ああ、そうなんだ」って。それで、「新ネタを見て欲しい」って言ってきたんですよ。「ヒデくんね、そういうお笑いをやりたい仲間だし、ヒデくんは面白そうだし、見て欲しい」って、いくつかネタというか、ちょっとしたギャグをマンツーマンで見せてきて。それは結構、キツかったんですけど(笑)
それで、「どう思う?」って言われて。僕は、「良いんじゃない?」って言ったんですよ。笑いはしなかったですよ。そこで愛想笑いするのも申し訳ないなって思ったから。「正直な気持ちを聞かせて欲しい」って言われたんですよ。
「僕もまだアマチュアだし、僕自身も出せるネタがあるわけでもないのに、そんな上から目線で言うことはできない」「いや、良いんだ。正直な気持ちを聞きたいんだ」って言うから。
「じゃあ、トクちゃんは良い人だし、僕はトクちゃんを信用してるから。正直に言うね…全く面白くなかったよ」って。「全く面白くないっていうよりも、もっと言うと、寒かったよ」って、ハッキリ伝えたんですよ。それはもう、トクちゃんがハッキリ言ってくれって言ったから、「正直、物凄く寒かったし、入学式のモノマネも、あの時も笑ってたなかったんだけど、アレも寒かったんだけど、今回も寒かったよ。これが俺の正直な気持ち」って言ったら、物凄くショックを受けてて。
「ウソ…どこが?」って、軽くちょっとムキになってきたんです。「何がいけなかった?」って。「じゃあ、全部言うよ」って。「まず、入学式の件で言うと、あそこの自己紹介で、プロを目指そうというトクちゃんが、散々、テレビで使い古されて、もう何なら、誰もやらなくなった、仮にプロがやるとすれば、そこに何かアレンジを加えてやってるようなものを、一番古い形で出す。その時点で、センスがないと思うんだ」と。
「俺だったら、怖くてやれないし。しかも、ゼロから自分で作ったものじゃないでしょ?ただ単に、テレビの真似事をして。みんなは、トクちゃんのセンスで笑ったわけではなくて、プロの人が産んだ、プロのセンスで笑っただけ。しかも、トクちゃんという素人のフィルターを通してるから、それほど笑ってはいないけどね」って(笑)
「だから僕は、そういうことをよくやるなって思った。もちろん、学生時代にそういうテレビで流行ったことをマネしたりすることもあったけど、プロを目指そうと思った日から、そういうことはしなくなった。プロの世界はそうではなくて。プロの世界は、自分で生み出したものだったり、自分でアレンジしたものをやらなくてはいけないと思ったから。その意識を持っていると、きっと、自分は成長しないし、通用しないと思ったから、上京してからは、その意識を持ってるんだ」と。
「その中で、まんまと学生時代のノリで、同じようにやってるトクちゃんを見た時に、『意識が低いんだろうな。芸人をやりたいって言ってるのに』って思ったけど、黙ってた。別に、僕のことじゃないし。そして、先ほどのギャグなんだけど、それも、トクちゃんがゼロから生み出したような言い方をしてるし、それと全く同じことをやってる人は、プロでは未だにいないけど、それは、結局、素人の僕でも、明らかにテレビでやってるプロの人のネタのパターンを、そのまま使って、別の言葉にすり替えてるだけだから、トクちゃんは、ゼロから生み出せてない」と。
「いくつか見せたけど、何一つ、ゼロから生み出せてない。その自覚があるかどうかわからないけど、多分、トクちゃんは自覚がないと思う。僕自身は、ゼロから生み出すことが大変だから、ネタを生み出せてない。でも、当たり前のように(他人が生み出したパターンの)ネタをやって、『どう?』って訊くってことは、凄く寒いと思ったよ」って言ったんですよ(笑)
トクちゃん、めっちゃ凹んで(笑)「じゃあ、どうしたら良いんだよ!」って言われたんですよ。「いや、それはトクちゃん自身が決めることだから。僕だって、まだ芸人さんじゃないから。僕は僕で、トクちゃんに言われたから、無理矢理、友達として答えたんだよ」って。優しさで答えたんだよって。
「だからって、僕はトクちゃんのことを嫌いにならないし、正直に言ったことで、気分を悪くしないで欲しい、と。今、僕が思ってることを、全部正直に言っただけだから」って。
そしたらトクちゃんが、「それだけ、ヒデくんの意識が高いのは分かった。たしかに、そう言われたら、そうかもしれない。心にグサグサ刺さった。どうしたら良いんだ?」って。「どうしたら良いかって、俺は言えない。それはトクちゃんが決めるべきだよ。上京してきたのも、トクちゃんの意志だし、トクちゃんの人生だから」って。
「いや、ヒデくんに相談したい」「僕が、今のトクちゃんだったらって、置き換えて考えることしかできないけど…俺は、諦めて実家に帰る」と(笑)
「俺は、割りとそういうところをさっぱりと考えるから。俺は、トクちゃん好きだから言う。俺の目から見たら、(お笑いの才能としての)芽はないと思う」って。「今、こうして話をして、グサグサ心に刺さったというけども、きっと、トクちゃんは、今後も同じようなことをやりそうだし、これまでやってきて、それなりに実績があるんでしょ?それなりに、気持ち良い思いをしてるから、そこからは離れられない。それを引きずったままこっちに来てるから」って。
「それでイケると思って上京してきてるから、相当厳しいと思う」と。「俺が今、トクちゃんに魂を入れ替えられたとしたら、俺はしんどいと思うから、帰ると思う」って(笑)
「でも、この学校は、お笑い芸人さんだけじゃなくて、俳優さんになる人もいるし、こっから色々見つけていけば良いし、僕の言葉に『何クソ』と思ったんだったら、別にいいと思うし、『お前だってアマチュアじゃねぇか』って思うんだったら、全然良いと思うし、僕が言ってることも、正しいとは限らない。一芸人を目指す、卵の意見にすぎないわけだから。それは単純に好みでもあるし、それで売れる人もいるわけだし。だから、俺の意見は気にしないで欲しい」って。
そっから、トクちゃんはその食事会で、ほとんど喋らなくなっちゃったんですよ。落ち込んじゃって。相当、響いたみたいで。でも、俺は正直に言えって言われたから。何回か断ったけど、しょうがないやって思って。
それで、結果的に言うと、それから数ヶ月後、本当にトクちゃん学校を辞めたんですよ。トクちゃんはその道を諦めたのか。あと、ずっと付き合ってる彼女が地元にいるってこともあったのかもしれないですけどね。でも、結果的にその学校は辞めてるんです。
これは、僕の言葉が原因かはわからないですよ。結果でしかないから。でも、思えばその翌日、学校に行ったら、女子生徒たちが、「ちょっとトクちゃんの様子がおかしいんだよね」って言ってたんです。
どうしたんだろうって思って、トレーニングルームに行って。そこに大きな鏡があるんですけど、そこでダンスのレッスンとかするところなんでね。みんなが雑談したり、ストレッチをしている中、クラスの人気者的な感じで、中心にいたトクちゃんが、鏡の前であぐらをかいて頭を抱えてずっと座ってたんですよ(笑)
それを女子が見ながら、「どうしちゃったんだろうね、トクちゃん」ってスゲェ心配してたんですよ。俺は、「アレかな?」って思ったんですけど(笑)でも、遠距離恋愛で悩んでたりもしたから、それもあるのかな、ホームシックなのかな、とか。僕の言葉かどうかはわからないですよ。
でも、その日くらいから、一切、ギャグ言わなくなったんですよ(笑)結局、そっからクラスの中心にいたトクちゃんが、大人しくなって。結果的に、お笑い芸人には多分、なってないと思いますけどね。もしかしたら、僕の言葉も、原因の一つかもしれないけど、彼女との遠距離恋愛の話も、女子に相談してたから。そっちもあったと思うんですよ。僕の言葉もあったかもしれないけどね。
だから新入生の皆さん、このように(笑)いきなり、入学式の翌日の自己紹介でかますのは、やめましょう(笑)
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番組バカリズム
![番組バカリズム [DVD]](https://ecx.images-amazon.com/images/I/51J8QzLORqL._SL200_.jpg)
バカリズム:今までの記憶を辿って行くと、学校とかで、最初の自己紹介でハシャグ奴というか、目立とうとする奴って、大体、最終学年になってる頃には、最下層にいるんですよね。何なんでしょうかね。
最初、軽く人気者になったりするのに。何なんだろうな。最初、目立とうとしたり、ちょっと強めに、男子校でヤンキーとかいる高校だったんで、アレなんですけど。最初に結構、かます奴って、後半、どパシリだったりするから。
割りと慎重にいった方が良いんですよね。だから、客観性がないってことなのかな。勇気はあるけど、それは勇気だけではなくて、空気が読めないっていうことにも繋がってくるし。長続きしないんですよね。いわゆる、一発屋で終わっちゃうというか。
俺、専門学校の時にね…僕が通ってたのは、日本映画学校っていう、俳優科と映像科があって。映像科は、映画監督になる人だったり、映画とかドラマとか、業界のスタッフさんになる人が入るんですけども。俳優科の方は、本当に俳優を目指す人、人前に立つ道を選んでくる人たちなんですけども。
だから、そういう人たちが集まってくるから、まあ比較的、人前に立ちたい、目立ちたいっていう人たちばっかりですよ。もちろん、その中にはクラスのお調子者、人気者もいたんでしょうよ。それで、僕はそんな中に入ったんですよ。
それで、入学式の翌日に、自己紹介があるんですけど、何人か目立とうとするヤツがいたんですよ。僕は、そういうの苦手だから、本当に普通に、淡々と自己紹介だけして。そんなところで目立とうとするヤツは、しょうもないヤツに決まってるって思うから。
それまでの経験もあるし。大体、最下層に行くから。目立つヤツって。まんまと居たんですよ。それで、トクちゃんっていう子なんですよね。トクちゃんは、入学式の時に、僕の隣にいたのを覚えてるんですよ。
彼は、坊主頭で爽やかな感じの。さっぱりした顔で、人当たりの良い感じですよ。それで、だいたい、会ったら好感を持たれる感じの。トクちゃんが座ってたんですよ。そういうヤツが座ってるなって思ったんですよ。
僕はもう来たばっかり、入ったばっかりで、誰も話す人いないから、隣のグループの話を黙って聞いてて。そこにグループができてて、その中心がトクちゃんだったんですよ。トクちゃんが目立って、そこを回してる感じがあったんですよ。
それで、関西弁をふんだんに使った、「ちょっと俺、面白いですよ」的な感じで、その場を和ませてたのを覚えてたんですよ。声も特徴的だったから。それで、そのトクちゃんが、入学式翌日の自己紹介で、かましてたんですよ。初っ端から。
何をやったかと言うと、自己紹介の後に、「僕はお笑いを目指してます」と。もう俺、オモロイでっせ的なノリで。その時にやり始めたのが、モノマネだったんですね。それも、さんざんテレビや色んなところで使い古された、田中邦衛さんのモノマネだったんですよ。
でも、和やかなムードにはなってたんですよ。自己紹介する人たちの中で、あんまりそういう人いなかったから。いきなり自分で率先して。勇気もいるしね。急にやったってことで、クラスも和やかになって。僕は全然笑ってないですよ。「うわ、テレビで散々、使い古されたネタを、よくそんなところでやる勇気あるな」と思ったんですよ。
でもね、お調子者だけど、悪いヤツじゃなさそうだから。特になんとも思ってなかったんですよ。それで、そこからトクちゃんは何かあるたびに、授業中…授業中って言っても、座学がないから、ダンスのレッスンや、芝居のレッスンで、割りと目立って、変な質問をしたりとか。目立ってたんですよ。
僕はその時、特に目立つこともなく、割りと地味なところで、とりあえずクラス全体の様子を伺ってたんです。誰を敵にしない方が良いのか、誰を味方にすれば良いのかってことでね。
僕は、男子校から共学に入ってきて、とりあえず、共学ってことが楽しくてしょうがなかったから、「女子と仲良くするにはどうすればいいかな」くらいの感じで、なんとなく全体を伺ってたんですよ。とりあえず、時間は3年間ありますから。3年間の中で、いかにベストポジションをとるかが重要ですから。
でも、トクちゃんは最初からガンガン、ガンガンやってて。ただ、面白くはなかったんですよ。基本的にただのお調子者ですよ。テレビでやってる、流行っているギャグをやったりとか。例の、田中邦衛さんのモノマネをやったりとか。それと同レベルくらいの別の芸能人の使い古されたモノマネをしたり。それでも、割りと、クラスを明るくしてたんですよ。トクちゃんは、クラスのなんとなく中心にいたんです。
それで、そんなある時、ちょっとずつ仲良くなり始めたくらいの時に、クラスの中で、食事会が行われたんです。それは、クラスの親睦を深めるために。僕もそこに出席して。僕も、多少、その辺の人たちと、徐々に仲良くなり始めで。僕もお笑いをやりたいって意志はその辺の中で明らかにしてて。なんとなく、「コイツ、ちょっとオモシロそうなヤツだよね」って雰囲気に徐々になりつつあって。
それで、さっそくその食事会の中で、ある程度、場が盛り上がってきた中で、トクちゃんが僕に近づいてきたんですよ。同じ、お笑いを目指してる人が少なかったから。その当時は、僕とトクちゃんくらいだから、話しかけてきたんです。
トクちゃんは良い人だから。僕も、面白いとは思わなかったけど、好感は持ってたから。それで、トクちゃんが話しかけてきたんですね。「お笑い、やりたいんやろ?ヒデくん」って。「僕もいつか、芸人になれればなって、思ってるんだけど」って。
「俺も、めっちゃお笑い好きやねん」って感じで。「ああ、そうなんだ」って。それで、「新ネタを見て欲しい」って言ってきたんですよ。「ヒデくんね、そういうお笑いをやりたい仲間だし、ヒデくんは面白そうだし、見て欲しい」って、いくつかネタというか、ちょっとしたギャグをマンツーマンで見せてきて。それは結構、キツかったんですけど(笑)
それで、「どう思う?」って言われて。僕は、「良いんじゃない?」って言ったんですよ。笑いはしなかったですよ。そこで愛想笑いするのも申し訳ないなって思ったから。「正直な気持ちを聞かせて欲しい」って言われたんですよ。
「僕もまだアマチュアだし、僕自身も出せるネタがあるわけでもないのに、そんな上から目線で言うことはできない」「いや、良いんだ。正直な気持ちを聞きたいんだ」って言うから。
「じゃあ、トクちゃんは良い人だし、僕はトクちゃんを信用してるから。正直に言うね…全く面白くなかったよ」って。「全く面白くないっていうよりも、もっと言うと、寒かったよ」って、ハッキリ伝えたんですよ。それはもう、トクちゃんがハッキリ言ってくれって言ったから、「正直、物凄く寒かったし、入学式のモノマネも、あの時も笑ってたなかったんだけど、アレも寒かったんだけど、今回も寒かったよ。これが俺の正直な気持ち」って言ったら、物凄くショックを受けてて。
「ウソ…どこが?」って、軽くちょっとムキになってきたんです。「何がいけなかった?」って。「じゃあ、全部言うよ」って。「まず、入学式の件で言うと、あそこの自己紹介で、プロを目指そうというトクちゃんが、散々、テレビで使い古されて、もう何なら、誰もやらなくなった、仮にプロがやるとすれば、そこに何かアレンジを加えてやってるようなものを、一番古い形で出す。その時点で、センスがないと思うんだ」と。
「俺だったら、怖くてやれないし。しかも、ゼロから自分で作ったものじゃないでしょ?ただ単に、テレビの真似事をして。みんなは、トクちゃんのセンスで笑ったわけではなくて、プロの人が産んだ、プロのセンスで笑っただけ。しかも、トクちゃんという素人のフィルターを通してるから、それほど笑ってはいないけどね」って(笑)
「だから僕は、そういうことをよくやるなって思った。もちろん、学生時代にそういうテレビで流行ったことをマネしたりすることもあったけど、プロを目指そうと思った日から、そういうことはしなくなった。プロの世界はそうではなくて。プロの世界は、自分で生み出したものだったり、自分でアレンジしたものをやらなくてはいけないと思ったから。その意識を持っていると、きっと、自分は成長しないし、通用しないと思ったから、上京してからは、その意識を持ってるんだ」と。
「その中で、まんまと学生時代のノリで、同じようにやってるトクちゃんを見た時に、『意識が低いんだろうな。芸人をやりたいって言ってるのに』って思ったけど、黙ってた。別に、僕のことじゃないし。そして、先ほどのギャグなんだけど、それも、トクちゃんがゼロから生み出したような言い方をしてるし、それと全く同じことをやってる人は、プロでは未だにいないけど、それは、結局、素人の僕でも、明らかにテレビでやってるプロの人のネタのパターンを、そのまま使って、別の言葉にすり替えてるだけだから、トクちゃんは、ゼロから生み出せてない」と。
「いくつか見せたけど、何一つ、ゼロから生み出せてない。その自覚があるかどうかわからないけど、多分、トクちゃんは自覚がないと思う。僕自身は、ゼロから生み出すことが大変だから、ネタを生み出せてない。でも、当たり前のように(他人が生み出したパターンの)ネタをやって、『どう?』って訊くってことは、凄く寒いと思ったよ」って言ったんですよ(笑)
トクちゃん、めっちゃ凹んで(笑)「じゃあ、どうしたら良いんだよ!」って言われたんですよ。「いや、それはトクちゃん自身が決めることだから。僕だって、まだ芸人さんじゃないから。僕は僕で、トクちゃんに言われたから、無理矢理、友達として答えたんだよ」って。優しさで答えたんだよって。
「だからって、僕はトクちゃんのことを嫌いにならないし、正直に言ったことで、気分を悪くしないで欲しい、と。今、僕が思ってることを、全部正直に言っただけだから」って。
そしたらトクちゃんが、「それだけ、ヒデくんの意識が高いのは分かった。たしかに、そう言われたら、そうかもしれない。心にグサグサ刺さった。どうしたら良いんだ?」って。「どうしたら良いかって、俺は言えない。それはトクちゃんが決めるべきだよ。上京してきたのも、トクちゃんの意志だし、トクちゃんの人生だから」って。
「いや、ヒデくんに相談したい」「僕が、今のトクちゃんだったらって、置き換えて考えることしかできないけど…俺は、諦めて実家に帰る」と(笑)
「俺は、割りとそういうところをさっぱりと考えるから。俺は、トクちゃん好きだから言う。俺の目から見たら、(お笑いの才能としての)芽はないと思う」って。「今、こうして話をして、グサグサ心に刺さったというけども、きっと、トクちゃんは、今後も同じようなことをやりそうだし、これまでやってきて、それなりに実績があるんでしょ?それなりに、気持ち良い思いをしてるから、そこからは離れられない。それを引きずったままこっちに来てるから」って。
「それでイケると思って上京してきてるから、相当厳しいと思う」と。「俺が今、トクちゃんに魂を入れ替えられたとしたら、俺はしんどいと思うから、帰ると思う」って(笑)
「でも、この学校は、お笑い芸人さんだけじゃなくて、俳優さんになる人もいるし、こっから色々見つけていけば良いし、僕の言葉に『何クソ』と思ったんだったら、別にいいと思うし、『お前だってアマチュアじゃねぇか』って思うんだったら、全然良いと思うし、僕が言ってることも、正しいとは限らない。一芸人を目指す、卵の意見にすぎないわけだから。それは単純に好みでもあるし、それで売れる人もいるわけだし。だから、俺の意見は気にしないで欲しい」って。
そっから、トクちゃんはその食事会で、ほとんど喋らなくなっちゃったんですよ。落ち込んじゃって。相当、響いたみたいで。でも、俺は正直に言えって言われたから。何回か断ったけど、しょうがないやって思って。
それで、結果的に言うと、それから数ヶ月後、本当にトクちゃん学校を辞めたんですよ。トクちゃんはその道を諦めたのか。あと、ずっと付き合ってる彼女が地元にいるってこともあったのかもしれないですけどね。でも、結果的にその学校は辞めてるんです。
これは、僕の言葉が原因かはわからないですよ。結果でしかないから。でも、思えばその翌日、学校に行ったら、女子生徒たちが、「ちょっとトクちゃんの様子がおかしいんだよね」って言ってたんです。
どうしたんだろうって思って、トレーニングルームに行って。そこに大きな鏡があるんですけど、そこでダンスのレッスンとかするところなんでね。みんなが雑談したり、ストレッチをしている中、クラスの人気者的な感じで、中心にいたトクちゃんが、鏡の前であぐらをかいて頭を抱えてずっと座ってたんですよ(笑)
それを女子が見ながら、「どうしちゃったんだろうね、トクちゃん」ってスゲェ心配してたんですよ。俺は、「アレかな?」って思ったんですけど(笑)でも、遠距離恋愛で悩んでたりもしたから、それもあるのかな、ホームシックなのかな、とか。僕の言葉かどうかはわからないですよ。
でも、その日くらいから、一切、ギャグ言わなくなったんですよ(笑)結局、そっからクラスの中心にいたトクちゃんが、大人しくなって。結果的に、お笑い芸人には多分、なってないと思いますけどね。もしかしたら、僕の言葉も、原因の一つかもしれないけど、彼女との遠距離恋愛の話も、女子に相談してたから。そっちもあったと思うんですよ。僕の言葉もあったかもしれないけどね。
だから新入生の皆さん、このように(笑)いきなり、入学式の翌日の自己紹介でかますのは、やめましょう(笑)
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