町山智浩、キング牧師の映画が50年もの間制作できなかったワケ「演説の著作権を遺族が管理している」
2015.01.22 (Thu)
2015年1月20日放送のTBSラジオ系のラジオ番組『たまむすび』(毎週月-金 13:00 - 15:30)にて、映画評論家・町山智浩が、マーティン・ルーサー・キング牧師を題材にした映画『セルマ』(Selma)がアメリカで公開されたことを受け、なぜ、今までキング牧師が題材の映画が制作されてこなかったという理由について語っていた。

町山智浩:キング牧師っていう人は、300年以上続いたアメリカにおける黒人の不平等を解決した人なんですよ。…完全には解決されてないですが、形だけでも解決した、凄い偉大な人で。
赤江珠緒:演説も、有名ですもんね。
町山智浩:ところがこの人、死後40数年も経って、1度も、この人を主役にした映画が作られてこなかったんですよ。
赤江珠緒:えっ?!そうなんですか、意外ですね。
町山智浩:50年間、ずっとハリウッドは作ろうとして。何度も、何度も、途中までいっては挫折。途中までいっては挫折…っていうのを繰り返してて。
赤江珠緒:へぇ。
町山智浩:この間、スティーブン・スピルバーグが制作、オリバー・ストーン監督・脚本で進行していたのに、それも途中で頓挫したんですよ。
山里亮太:なんで、また?
町山智浩:次々と頓挫して。この『セルマ』という映画が、初めてのマーティン・ルーサー・キング牧師の映画なんですね。
赤江珠緒:へぇ。
町山智浩:…偉人中の偉人なんですよ。それで、『セルマ』は、キング牧師の弱い面、悩んだり、試行錯誤している部分とか、人間的に弱い部分をさらけ出した部分を描いた、初めての映画なんですね。
赤江珠緒:へぇ。
町山智浩:このキング牧師の映画が、今まで作られなかった理由も、そこにあるんですよ。キング牧師の演説は、全部、キング牧師の遺族が著作権を管理してるんですよ。
赤江珠緒:あの"I have a dream"ですか?
町山智浩:そうなんです。有名な演説は、全て管理していて。遺族の許可がないと、映画で演説が一切使えなくなるんですよ。
赤江珠緒:へぇ。
町山智浩:遺族は何人もいて、その全員の許可を取らないとダメなんです。スティーブン・スピルバーグは、それをやり遂げて。「さあ、映画を作ろう!」というところで、オリバー・ストーンが、キング牧師の女性問題とかにクローズアップして脚本を書いたんですね。
赤江珠緒:はい。
町山智浩:オリバー・ストーンが、自分がスケベだからっていうのもあるんですけど(笑)
赤江珠緒:なるほど(笑)
町山智浩:そしたら、キング牧師の遺族の許可を得られなかったんで、制作が頓挫しちゃったんですよ。
山里亮太:うわぁ。
町山智浩:そこで、映画監督のエヴァ・デュヴルネ(エバ・デュバーネイ)っていう黒人の女性映画監督、現在43才が名乗りを上げて。若くて、しかも映画2本目なんですよ。
山里亮太:へぇ。
町山智浩:その前の映画1本は、習作なんで、本格的な映画は、これが初めてなんですね。ところが彼女は、「許可が出ないなら、キング牧師の遺族の許可を取らないで行こう!」って決めたんですよ。
赤江珠緒:えっ?
町山智浩:「そうじゃないと、いつまで経っても映画ができない。今、作らなきゃいけないのよ!」ってことで。彼女は全部、類語辞典を引きながら、キング牧師の演説を全部、類語に変えていったんですよ。
赤江珠緒:へぇ!
町山智浩:…演説を全部書き換えて、この映画の制作を強行突破したわけですよ。
赤江珠緒:違う言葉に換えてたら、それは許可は要らないですよね。
町山智浩:そう。遺族全員の許可を取ってないんですけど、強行突破してるんですよ。
赤江珠緒:へぇ。
町山智浩:50年かかって男たちがこねくり回して作れなかった映画を、40代そこそこの女性監督が、一気に強行突破したんで。やっぱり凄いなぁって思いましたけどね。
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町山智浩:キング牧師っていう人は、300年以上続いたアメリカにおける黒人の不平等を解決した人なんですよ。…完全には解決されてないですが、形だけでも解決した、凄い偉大な人で。
赤江珠緒:演説も、有名ですもんね。
町山智浩:ところがこの人、死後40数年も経って、1度も、この人を主役にした映画が作られてこなかったんですよ。
赤江珠緒:えっ?!そうなんですか、意外ですね。
町山智浩:50年間、ずっとハリウッドは作ろうとして。何度も、何度も、途中までいっては挫折。途中までいっては挫折…っていうのを繰り返してて。
赤江珠緒:へぇ。
町山智浩:この間、スティーブン・スピルバーグが制作、オリバー・ストーン監督・脚本で進行していたのに、それも途中で頓挫したんですよ。
山里亮太:なんで、また?
町山智浩:次々と頓挫して。この『セルマ』という映画が、初めてのマーティン・ルーサー・キング牧師の映画なんですね。
赤江珠緒:へぇ。
町山智浩:…偉人中の偉人なんですよ。それで、『セルマ』は、キング牧師の弱い面、悩んだり、試行錯誤している部分とか、人間的に弱い部分をさらけ出した部分を描いた、初めての映画なんですね。
赤江珠緒:へぇ。
町山智浩:このキング牧師の映画が、今まで作られなかった理由も、そこにあるんですよ。キング牧師の演説は、全部、キング牧師の遺族が著作権を管理してるんですよ。
赤江珠緒:あの"I have a dream"ですか?
町山智浩:そうなんです。有名な演説は、全て管理していて。遺族の許可がないと、映画で演説が一切使えなくなるんですよ。
赤江珠緒:へぇ。
町山智浩:遺族は何人もいて、その全員の許可を取らないとダメなんです。スティーブン・スピルバーグは、それをやり遂げて。「さあ、映画を作ろう!」というところで、オリバー・ストーンが、キング牧師の女性問題とかにクローズアップして脚本を書いたんですね。
赤江珠緒:はい。
町山智浩:オリバー・ストーンが、自分がスケベだからっていうのもあるんですけど(笑)
赤江珠緒:なるほど(笑)
町山智浩:そしたら、キング牧師の遺族の許可を得られなかったんで、制作が頓挫しちゃったんですよ。
山里亮太:うわぁ。
町山智浩:そこで、映画監督のエヴァ・デュヴルネ(エバ・デュバーネイ)っていう黒人の女性映画監督、現在43才が名乗りを上げて。若くて、しかも映画2本目なんですよ。
山里亮太:へぇ。
町山智浩:その前の映画1本は、習作なんで、本格的な映画は、これが初めてなんですね。ところが彼女は、「許可が出ないなら、キング牧師の遺族の許可を取らないで行こう!」って決めたんですよ。
赤江珠緒:えっ?
町山智浩:「そうじゃないと、いつまで経っても映画ができない。今、作らなきゃいけないのよ!」ってことで。彼女は全部、類語辞典を引きながら、キング牧師の演説を全部、類語に変えていったんですよ。
赤江珠緒:へぇ!
町山智浩:…演説を全部書き換えて、この映画の制作を強行突破したわけですよ。
赤江珠緒:違う言葉に換えてたら、それは許可は要らないですよね。
町山智浩:そう。遺族全員の許可を取ってないんですけど、強行突破してるんですよ。
赤江珠緒:へぇ。
町山智浩:50年かかって男たちがこねくり回して作れなかった映画を、40代そこそこの女性監督が、一気に強行突破したんで。やっぱり凄いなぁって思いましたけどね。
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