TOP土田晃之 日曜のへそ ≫ 池上彰、エボラ出血熱の世界的な拡散と治療薬として期待されるアビガンを解説

池上彰、エボラ出血熱の世界的な拡散と治療薬として期待されるアビガンを解説

2014.10.28 (Tue)
2014年10月26日放送のニッポン放送系のラジオ番組『土田晃之 日曜のへそ』(毎週日 12:00 - 14:00)にて、ジャーナリスト・池上彰がゲスト出演し、世界中に拡散するおそれのあるエボラ出血熱について解説を行っていた。

ここがポイント!! 池上彰解説塾 1
ここがポイント!! 池上彰解説塾 1

エボラ出血熱とは

リスナーメール:今週、アメリカでエボラ出血熱の感染が出ましたが、今後、感染は広がりますか?お正月に旅行に行きたいのですが、大丈夫ですか?一番注意しなければいけないことを教えてください。

池上彰:今、西アフリカでどんどん広がっていますね。まだまだ広がり続けますね。

土田晃之:はい。

池上彰:極めて感染力が高いですから。

土田晃之:半年で、相当な数増えるって言われてますね。

池上彰:ええ。今のままだと、まだまだ増え続けますね。

土田晃之:これは、アフリカとかで教育が行き届いていないのもあるじゃないですか。防護服を着ている人たちのところに行ったから、伝染ったんだって思ってて。

池上彰:ええ。

土田晃之:「あそこに行ったら、殺されるぞ」って地元の人達が言ってるって報道されてましたもんね。

池上彰:欧米に対する、物凄い不信感っていうものがあって。普通に暮らしてたところへ、突然、宇宙服を着たみたいな人がくるわけでしょ。

土田晃之:たしかに(笑)

池上彰:瀕死の重症だから、その人たちを連れて病院に入院させるわけですよ。でも、治療の甲斐なく亡くなるわけで。そうすると、宇宙服を着たようなヤツが連れて行って、死んだ。殺された…みたいに思っちゃうわけですよ。

土田晃之:エボラ出血熱は、治らないんですか?

池上彰:現在のところ、致死率70%くらいで。

土田晃之:70 %ですか。

池上彰:ということは、30%の人は、自分の免疫力で助かってるわけですね。

土田晃之:へぇ。

治療薬アビガン(ファビピラビル)

池上彰:今、注目されているのが、富士フィルムの子会社が作ったインフルエンザ用の薬が効くんじゃないか、と。

土田晃之:今、1人助かったって話ですよね。

池上彰:すでに2人回復してますね。

土田晃之:アメリカの患者さんですか?

池上彰:アメリカと、スペインですね。…これね、インフルエンザ対策の薬として出来たんですね。そもそも、ウィルスって、自分で増殖することができないんです。細菌は細胞を持ってて、自ら細胞分裂して増えることができるけど、ウィルスはそれができない。生きている細胞に取り付いて、その細胞を乗っ取って、自分のコピーを作らせて、その細胞を破って、外に飛び出して行く。

土田晃之:はい。

池上彰:そして、他の細胞に取り付いて、細胞が次々に死んでいくことによって、人間は病気になるわけですね。

土田晃之:はい。

池上彰:この時に、抗ウィルス薬として、最近ではタミフルやリレンザがありますけども。アレは何かって言うと、細胞に取り付いて、ものすごく増えたウィルスが、細胞を破って外に出て行くのを抑える働きがあるんですよ。

土田晃之:ああ、そういうことなんですか。

池上彰:それで効くんですね。増えたウィルスが、外に出ていかないように閉じ込めるんです。

土田晃之:へぇ。

池上彰:それに対して、富士フィルムの子会社が作ったのは、ウィルスが細胞に入った時、細胞の中で増えるのを止める働きがあるんです。そもそも、増えないようにしちゃう。

土田晃之:ああ、なるほど。

池上彰:そのインフルエンザのウィルスが、エボラ出血熱のウィルスと性質が似ているんじゃないか、と。ウィルスの遺伝子の形が、ともにRNA型のウィルスで、富士フィルムの子会社が作った薬は効くんじゃないか、と気づいた人がいたんですね。

土田晃之:はい、試しにやってみよう、と。

池上彰:それで、試してみたら、どうも効いてるらしい、ということになってね。

土田晃之:へぇ。

池上彰:つまり、エボラ出血熱のウィルスに感染してしまった、細胞にとりついたところで、細胞の中でウィルスが増えないようにしている、と。

土田晃之:うん。

池上彰:だから、そこでおしまいになって、回復をするんじゃないか、と。

土田晃之:なるほどね。富士フィルムの子会社の薬、今は確保してるというか、増産してるんですもんね。万が一、日本にこれでエボラ出血熱が入ってきたところで、と。

治療薬アビガン(ファビピラビル)の注意点

池上彰:ただし、一つ気をつけなきゃいけないのは、動物実験の段階で、催奇形性が…つまりは、妊娠した子供に、奇形が生じる危険性があるってことが、出てるんですよ。

土田晃之:つまりは、妊婦さんとかは注意が必要だ、と。

池上彰:妊婦さんとか、これから妊娠する可能性のある人は、飲んじゃいけないんですけど…でも、エボラ出血熱に罹ったら、いつ死ぬかも分からない。それだったら、使った方がいいだろうっていう、特別なことで使ってるってことなんです。

土田晃之:これは、普通にインフルエンザの時にでも、使える薬なんですか?

池上彰:今年の3月に使用できるようになったんですけど。

土田晃之:なったばっかりですね。

池上彰:なったんですけど、催奇形性があるかもしれないってことで、特別な条件がついていて。「全く新しいインフルエンザが日本で広がり始め、タミフルやリレンザが効かない場合には、使用できる」という特別な条件がついて、認可されたものなんです。

土田晃之:そうか、今、インフルエンザになったとしても、タミフルやリレンザをメインで使う、と。

池上彰:そうです。こちらは使われません。

土田晃之:新型インフルエンザのようなものが出てきた際には使おう、と。

池上彰:その特別な薬が、「エボラに使えるんじゃないの?」って話になったってことなんです。

パンデミックを起こしつつあるエボラ出血熱と対策

土田晃之:感染、広がりますよね?世界的に。

池上彰:広がってますね。

土田晃之:アメリカだって、スペインだって。その方が飛行機に乗ってたってなったら、一緒に乗ってた乗客の人にも感染するかも、と。

池上彰:潜伏期間があってね。早ければ3日くらいで発病しますけど、長い場合は、3週間くらい掛かるんですね。潜伏期間中には感染せず、発病したら感染する、と言われていますね。

土田晃之:ああ、そうですか。

池上彰:しばらくはなんともなくて。そのうち、熱が出てきて気持ち悪くなって吐くんですよ。あるいは、下痢をする。そうした吐瀉物や便が掛かってしまったりすると、人間の体って、目に見えない形で傷がいっぱいあるので、感染してしまう。

土田晃之:はい。

池上彰:たとえば、これから冬になると、手がカサカサ荒れるでしょ?これは、手に細かい傷があるってことなんです。そんなものがちょっとついただけで、感染するんですね。

土田晃之:ささくれみたいなね。

池上彰:うん。だから、今回、看護師・看護助手が感染してるでしょ?

土田晃之:そうですね。

池上彰:あれは、防護服を着てたのに、なったんですよ。

土田晃之:うん。

池上彰:防護服を着て暑い。暑いもんだから、手袋で無意識に額の汗を拭ったっていうんですね。

土田晃之:え?それだけで?

池上彰:そう。額の汗を拭った。そこに、本人が分からないような細かいキズがあって、そこから感染したんじゃないか、と。ウィルスが…ごくわずかなウィルスが入っただけで感染するんですよ。

土田晃之:はぁ~。スゲェな。でも、それこそかつて、エボラ出血熱といえば、アフリカとかの大陸の病気で、こっちでは感染しないって言われてたけど、もう分からないですもんね。こんだけ飛行機もあるし、世界中に人が行き来してるから。いつ日本に来たって分からないですもんね。

池上彰:そうなんです。だから、その時にどうしたら良いのかなってことを、今から準備しておかなければいけないってことですね。


同番組の過去記事



  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

タグ : 池上彰,土田晃之,

トップページへ  |  この記事へのリンク  |  土田晃之 日曜のへそ
次の記事:バカリズム、『素敵な選TAXI』の脚本を書いて分かったこと「忙しいのが毎日になるとそれが平常運転に」

前の記事:池上彰が語る、朝日新聞の慰安婦問題での誤報とコラム不掲載問題の裏側