吉田豪氏の「春一番の死因についての記事」に関する疑問点
2014.07.05 (Sat)
東京BREAKING NEWSに掲載された『ほぼ日刊 吉田豪』の「酒だけじゃなかった!春一番の死期を早めた昭和のテレビ演出...」を読んだところ、いくつかの疑問点があったため、以下に私見を加えて考察する。
同記事では、『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』での演出上の問題があり、死因と関連していた、と結論付けているが、その考察が主に医学的に許容できるものなのか、私なりに考えてみた。
吉田豪氏は、
まず、乾癬という疾患についてであるが、これは皮膚病の一種であり、代表的な炎症性角化症の一つである。青年~中年期の発症が多く、皮膚に厚い銀白色の鱗屑(角質細胞が皮膚にはがれかかった状態で付着しているもの)を伴った紅斑、丘疹(隆起を伴った皮疹)が出現する。
現在、原因ははっきりとしていない。『あたらしい皮膚学』(中山書店)によると、
とある。
繰り返すが、医学的には乾癬の原因ははっきりしていない。さらには、遺伝的な素因も発症に関与しているという指摘もあることから、吉田豪氏の「カレー粉まみれになったのをきっかけに乾癬という皮膚病になり」という、カレー粉がさも原因となっているというような記載の方法には、疑問を投げかけざるを得ない。たしかに、配慮のない撮影環境で、一因となった可能性もあるが、医学的には「カレー粉まみれになったのをきっかけに乾癬に…」と断定することは誤りであろう。
次に、乾癬の治療についてであるが、吉田豪氏は、
乾癬の治療としては、活性型ビタミンD3軟膏やステロイド外用(内服は膿疱性乾癬を惹起する可能性があり、原則、行われない)などが行われる。重症であると、上記のように、免疫抑制剤(メトトレキサートやシクロスポリン)を使用することはある。
免疫抑制剤、とくにシクロスポリンの内服では、たしかに副作用として腎障害を呈することはある。そして、免疫抑制療法下の患者では腫瘍の発生頻度が高くなると言われているが、上記の表現では、「免疫抑制剤の使用=肺腫瘍の発生の原因」といった捉え方をされかねないため、適切ではないと考えられる。その他、喫煙(受動喫煙を含む)といったその他の要因などもあったのではないだろうか。
という一文で記事は終わっているが、これも上記「1) 乾癬となった原因について」の理由同様、表現として適切ではないと考えられる。乾癬の原因が「バラエティ番組で使用されたカレー粉」と断定はできない以上、「昭和のデタラメな番組の被害者」と言うことはできないだろう。
最後にもう一つ。乾癬、肝不全、腎障害、肺腫瘍…という状態であれば、誰が診療しても非常に治療に難渋するだろう。だが、本当に医師は「見放した」のだろうか。肝不全、末期癌であろうとも、終末期医療に至るまで、完治は見込めなくても診療を続けたはずだ。その状態を「見放した」と表現することも、医療従事者側からすれば望ましいものではないだろう。
以上が、吉田豪氏の記事を読んだ上での疑問点である。
私が『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』の一ファンということもあるが、責任を一方的に負わされていることに納得がいかなかったため、本稿を記載させていただいた次第である。
同記事では、『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』での演出上の問題があり、死因と関連していた、と結論付けているが、その考察が主に医学的に許容できるものなのか、私なりに考えてみた。
1) 乾癬となった原因について
吉田豪氏は、
親交があったほとんどの人が「春ちゃんは飲み過ぎだったから......」とコメントしていて、確かに「こんな飲み方を続けていたら10年もつ人生が3年や4年で終わってしまうかもしれない」ってぐらいの飲みっぷりだったのは事実なんですけど、『お笑いウルトラクイズ』でカレー粉まみれになったのをきっかけに乾癬という皮膚病になり…と記載している。
まず、乾癬という疾患についてであるが、これは皮膚病の一種であり、代表的な炎症性角化症の一つである。青年~中年期の発症が多く、皮膚に厚い銀白色の鱗屑(角質細胞が皮膚にはがれかかった状態で付着しているもの)を伴った紅斑、丘疹(隆起を伴った皮疹)が出現する。
現在、原因ははっきりとしていない。『あたらしい皮膚学』(中山書店)によると、
根本的な原因は不明。家族内発症率も高いことから、多因子遺伝が発症に関与していることは確実である。一卵性双生児において一方が罹患している場合、他方の罹患率は65%といわれる。(中略)さまざまな刺激、外傷、日光、感染(とくに溶連菌)、薬剤(リチウム、βブロッカー、カルシウム拮抗薬など)といった誘発因子も存在する。
とある。
繰り返すが、医学的には乾癬の原因ははっきりしていない。さらには、遺伝的な素因も発症に関与しているという指摘もあることから、吉田豪氏の「カレー粉まみれになったのをきっかけに乾癬という皮膚病になり」という、カレー粉がさも原因となっているというような記載の方法には、疑問を投げかけざるを得ない。たしかに、配慮のない撮影環境で、一因となった可能性もあるが、医学的には「カレー粉まみれになったのをきっかけに乾癬に…」と断定することは誤りであろう。
2) 治療について
次に、乾癬の治療についてであるが、吉田豪氏は、
乾癬という皮膚病になり、治療のため免疫抑制剤を飲むようになったら副作用で腎不全&肺腫瘍になり…と記載している。
乾癬の治療としては、活性型ビタミンD3軟膏やステロイド外用(内服は膿疱性乾癬を惹起する可能性があり、原則、行われない)などが行われる。重症であると、上記のように、免疫抑制剤(メトトレキサートやシクロスポリン)を使用することはある。
免疫抑制剤、とくにシクロスポリンの内服では、たしかに副作用として腎障害を呈することはある。そして、免疫抑制療法下の患者では腫瘍の発生頻度が高くなると言われているが、上記の表現では、「免疫抑制剤の使用=肺腫瘍の発生の原因」といった捉え方をされかねないため、適切ではないと考えられる。その他、喫煙(受動喫煙を含む)といったその他の要因などもあったのではないだろうか。
まとめ
…それで医者が見放すぐらいまでボロボロになったことを思うと、酒だけじゃなくて昭和のデタラメな番組の被害者でもあったって気がします。
という一文で記事は終わっているが、これも上記「1) 乾癬となった原因について」の理由同様、表現として適切ではないと考えられる。乾癬の原因が「バラエティ番組で使用されたカレー粉」と断定はできない以上、「昭和のデタラメな番組の被害者」と言うことはできないだろう。
最後にもう一つ。乾癬、肝不全、腎障害、肺腫瘍…という状態であれば、誰が診療しても非常に治療に難渋するだろう。だが、本当に医師は「見放した」のだろうか。肝不全、末期癌であろうとも、終末期医療に至るまで、完治は見込めなくても診療を続けたはずだ。その状態を「見放した」と表現することも、医療従事者側からすれば望ましいものではないだろう。
以上が、吉田豪氏の記事を読んだ上での疑問点である。
私が『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』の一ファンということもあるが、責任を一方的に負わされていることに納得がいかなかったため、本稿を記載させていただいた次第である。
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