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映画評論家・町山智浩、アメリカを滅ぼす肥満への対抗運動を阻むジャンクフード会社「ピザは野菜と反論」

2014.06.11 (Wed)
2014年06月10日放送のTBSラジオ系のラジオ番組『たまむすび』(毎週月-金 13:00 - 15:30)にて、映画評論家の町山智浩が、映画『Fed Up』(日本公開未定)について語っていた。

この映画では、アメリカの食料・栄養問題を描いたドキュメンタリー作品であり、ジャンクフード漬けとなった子供たちのもはや1/3が糖尿病となっているような状況、そして肥満・糖尿病にかかる社会保障費が莫大になり、国を滅ぼす事態にまで発展してしまう可能性について指摘しているという。

町山は、オバマ大統領夫人であるミシェル・オバマが推進する「Let's move」という運動についても紹介。この運動では、学校給食に提供されるジャンクフードなどを見直すという動きのことであるが、その運動を推進する団体事態にジャンクフードの会社が入り込んでおり、さらには学校栄養士組合にもジャンクフード会社からの資金提供が行われ、容易には反対できないどころか、むしろミシェル・オバマの運動を阻む動きをしている、町山は語った。

アメリカでは、貧困層はジャンクフードに頼らざるを得ず、肥満にも関わらず栄養失調状態となり、入隊検査で除外されてしまうこともあるという。そんな食料・栄養問題が起こった社会的な背景について解説していた。

知ってても偉くないUSA語録
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町山智浩:アメリカは今、危機的状態にあって。貧しい人は、軍隊に入るしかないんですけど…貧困から脱出したり、学校に行くために入隊するんですけど、軍隊に入ろうとしても、入れないんですよ。

山里亮太:あっ、(入隊検査に)引っかかっちゃうんだ。

町山智浩:入隊検査で、栄養失調で落とされちゃうんですね。

山里亮太:へぇ。

町山智浩:現在、入隊希望者の25%が栄養失調で落とされてるんですよ、アメリカでは。栄養失調の状態っていうのは肥満であるとか、糖尿病も入るんですけども、軍隊に入れないんですよ。

山里亮太:へぇ。

町山智浩:現在、アメリカってオバマさんが医療保険を改革したんで、貧しい人たちの医療保険も国が税金でカバーすることになりましたよね?

赤江珠緒:はい、皆保険をね。日本みたいに。

町山智浩:ところが、この糖尿病が異常に多いので、その部分の負担を国がしなきゃならなくなっていて。その額が1000億ドルって言われてるんですよ。

赤江珠緒:ほぉ。

町山智浩:そうなんですよ。だからこれ、かなりアメリカとしては肥満と糖尿病を治さないと国が滅ぶんですよ。

山里亮太:へぇ。

町山智浩:だから、何とかしようということで、ミシェル・オバマさん。オバマ大統領の奥さんが、オバマさんが大統領に就任してからずっとですね、「肥満との戦い」っていうのを掲げてるんですね。「Let's move」、つまりは「行動に移しましょう」っていう運動としてですね、ミシェル・オバマさんがやっていて。

赤江珠緒:うん。

町山智浩:2010年に、とりあえず学校給食から体に悪いものを全部取り除こう、という法案を出したんですね。

赤江珠緒:えっ?そもそも学校給食が、体に悪いものだったんですか?

町山智浩:そうなんですよ。これ、驚くんですけど。2010年に法制化した「Healthy Hunger-Free Kids Act」、つまりは「健康で飢えのない子どもたちのための法」っていう意味で、「ヘルシー法」って略しますけども。

山里亮太:はい。

町山智浩:このヘルシー法で、学校給食から禁じられたものっていうのは、コーラ、ソーダ、ジュース、フライドポテト、フライドチキン、キャンディー、ゼリー…

山里亮太:えっ?ジャンクだな、給食(笑)

町山智浩:驚くでしょ?「これ禁止したってことは、2010年まではこれが出てたの?」って思うでしょ。学校で、コーラやフライドポテト、キャンディーを出してたの?って思うでしょ?出してたんですよ。ずっと、アメリカは。

山里亮太:なんで?給食、ちゃんとすればいいのに。

町山智浩:これ、信じられないことですけど、出してたんですよ。出していただけじゃなくて、アメリカの多くの、貧しい地域の学校には、学校の中にコーラの自動販売機があります。

赤江珠緒:へぇ、好きな時に買える?

町山智浩:これはどうしてかっていうと、コーラとかジャンクフードの会社が、学校に援助するんですよ、資金を。

山里亮太:ほぉ。

町山智浩:それで、給食とかに自分たちの飲み物とか食べ物を導入させたり、自動販売機を置くんですね。

山里亮太:ほぉ。

町山智浩:アメリカは、各学校を州とか市が運営してるんですけども、各地方自治体は、経営が上手くいってないし、特に、貧しい地域は学校のお金がないんですね。

山里亮太:うん。

町山智浩:だから、コーラ会社とかが来て「自動販売機を置かせてください。その代わりに跳び箱をあげます。鉄棒を作ってあげます」って言われると、自動販売機を置かせちゃうんですよ。

山里亮太:へぇ。でも、ちょっと売上があがるぐらいのメリットじゃないんですか?それって。

町山智浩:いやいや。これは、子供の体を砂糖漬けにするための長い戦略なんですよ。こういったジャンクフードに慣れさせるためなんですよ。

山里亮太:へぇ。

町山智浩:それで、アメリカの学校給食の75 %にジャンクフード会社が入ってるんですよ。

山里亮太:え?

町山智浩:学校給食で、ピザとかが出るんですよ。75 %ですよ。冷凍ピザとかが出るんですよ。これはまず、要するに学校給食を作る人たちっていうのを雇えないっていう貧しい状態があるわけですよ。

山里亮太:なるほどな。

町山智浩:冷凍ピザならすぐ出せるでしょ?しかも、物凄く安く卸すんですよ、業者は。

山里亮太:小さい頃から、慣らしておくんだ。

町山智浩:小さい時から慣らしておくっていうのもあるし、学校全体は物凄い数ありますから、それを全部、自分たちの市場にすれば、巨大なマーケットじゃないですか。だから、75 %にジャンクフード会社が入ってるんですよ、冷凍食品会社とか。

赤江珠緒:でも、アメリカは栄養学みたいなものはないんですか?

町山智浩:栄養士います。栄養士もいて、5万5,000人の栄養士たちの栄養士組合っていうのがあるんですね。

赤江珠緒:そういうところは、文句を言わないんですか?

町山智浩:ところがですね、SNA(School Nutrition Association)っていうんですけども。学校栄養士組合というものがあるんですけど。そこは、ミシェル・オバマさんがやっている給食改革に、反対している組織なんですよ。

山里亮太:えっ?むしろ、そっちの方に賛同しそうですけど。

町山智浩:それに対して、徹底的に反対している人たちがアメリカ栄養士組合なんですよ。

山里亮太:なんでです?

町山智浩:たとえば、今年の5月の終わりに、新しいヘルシー法、給食をヘルシーにするための法律っていうものに対して、これを見直そうと。「規制が厳しすぎるから、もっと緩和しよう」っていう法案が、下院の委員会を通っちゃったんですよ。

赤江珠緒:せっかくヘルシー法作ったのに。

町山智浩:それを主導したのが、アメリカ栄養士協会なんですよ。

赤江珠緒:この矛盾は、何なんですか?

町山智浩:で、アメリカ栄養士協会は、どういう理由でこれが厳しすぎるって言ったかっていうと、「野菜を給食にたくさん入れたから、子供たちは野菜を食べないで全部捨てている」と。

山里亮太:ほう。

町山智浩:写真までつけて。各地域にいる栄養士たち5万5,000人が、「せっかくブロッコリーとかを出しても捨てているから無駄である」というようなことを言ったり。

山里亮太:ほう。

町山智浩:あと、スパゲッティやパスタ、トルティーヤなども精白して、殻とか繊維を取り除いて白くしたものを使うのを禁止したんです。そのヘルシー法では。つまりそれはほとんど糖分だから、体に入るとすぐに糖に変わってしまって、脂肪になってしまうんです。

赤江珠緒:なるほど。

町山智浩:だからそうならないようにするためには、繊維も一緒に摂る必要があるんですね。だから、「全粒粉のものだけを給食で出す」っていう風にしたんですね。そしたら、それは食べにくいからってみんな捨てているっていう写真を栄養士協会は提出して。それによって下院の多数決を通っちゃったんです。

赤江珠緒:えっ…でも、栄養士協会は、それが栄養があるっていうことをわかっているわけだから、それを。みんなが捨てているところを、美味しくして、どんどん食べましょうっていう風に推進していくべきじゃないですか?

町山智浩:そう。栄養士協会が栄養のある食べ物に反対してるんですよ、アメリカは。

山里亮太:え?なんでですか?

町山智浩栄養士協会の年間の運営資金1,000万ドルのうち、半分は冷凍ピザの大手とかですね、ジャンクフード企業からの寄付で成り立ってるんです。

赤江珠緒:えー?そこもなの?

町山智浩:だから栄養士協会、今までずーっとアメリカの学校給食をやっていたにも関わらず、ほとんどジャンクフード。75%ジャンクフードだったのは、彼らがジャンクフード会社からお金もらって食っているからなんですよ。

赤江珠緒:アメリカ、大丈夫ですか?

町山智浩:これね、ミシェルさんもよく調べてなかったらしくて、今回の栄養士協会の物凄い攻撃に対してビックリして。「こんなことがどうして起こるの?」とか言ってるんです。もっとよく調べておけば分かったことなんですよ。

赤江珠緒:うん。

町山智浩:それだけじゃなくて、ミシェル・オバマさんがやっている「Let's move」っていう肥満対策運動自体に、資金を出しているのもジャンクフード会社なんです。

山里亮太:え?

町山智浩:ミシェル・オバマさんが「この運動をやるよ」って言った時に、彼らは潰すんじゃなくて、逆に内部に入り込んでお金をつぎ込むことによって、ジャンクフード排除をできないようにしたんですよ。

山里亮太:あぁ!

町山智浩:だから、給食に75%のジャンクフードが入っているわけですよ。そのままの形で、彼らがヘルシーな給食を提供するっていう形にしかできないようにしたんですよ。

山里亮太:へぇ。

町山智浩:だから、たとえば…コーラを提供していた会社があって、コーラがダメだって禁止された。「じゃあウチは、100 % 果汁のオレンジジュースも出しているから、そっちを導入します」っていうやり方をするんですよ。

山里亮太:あぁ、なるほど。

町山智浩:でも、給食に結局、その企業は、入ったままなんですよ。でも、本当は100 %オレンジジュースっていうのは危険なものなんですよ。糖分の量がものすごく多い。

山里亮太:あぁ、そうか。

町山智浩:自然界には全て、糖分を摂ろうとすると、繊維が入ってるんですね。完全な糖質のまま、純粋に存在する食べ物って世の中にはないんですよ、実際には。

山里亮太:はい。

町山智浩:だから、果物を食べると一緒に繊維も摂るから。繊維も摂るとゆっくり吸収されるんで、全てゆっくりエネルギーになるんですね。ところが、繊維を取り除いたジュースは糖分だけが入るんで、体の中でいきなり、大量に吸収されてしまって。消化できないからほとんどが脂肪になっちゃうんですよ。

山里亮太:へぇ。

町山智浩:本当だったら同じカロリーであっても、じっくり何時間もかけてエネルギーになるのに、燃焼できないで、全部脂肪になっちゃうんですよね。だから、100%ジュースってダメで、繊維が入ってないと意味がないんですよ。

山里亮太:そっか。そんなことを分かってても、止められないんですね。お金もらっているし。

町山智浩:止められないです。栄養士協会だって。

赤江珠緒:一番止めるべきところが。

町山智浩:そうそう。この「Let's move」っていう運動自体に大量にコーラ会社とか入っちゃってるから。それで、「我々は提供し続けますが、ヘルシーなものを提供しますよ」って言って、受注量だけは減らないようにしてるんですよ。

山里亮太:これがわかったから、もう「スポンサーはいいです」って切って、自分たちでちゃんと正しい方に行くってことは、できないんですか?

町山智浩:できないんです。だからもう、ミシェルさんは完全に骨抜きにされた状態になっていて。ただイライラしているだけなんですけども。

赤江珠緒:あぁ。

町山智浩:もっと凄いのは、下院を通ったっていうことで、下院って共和党が支配してるんですね。共和党の議員が支配してるんですけども。共和党の議員っていうのはほとんどが南部から来てるんですよ。南部っていうのはいちばん貧しくて、肥満が多い地帯なんですよ。

山里亮太:はい。

町山智浩:だから彼らは、自分たちの出身の州で肥満が多いってこと自体、解決しようとしない。フード産業とかの言いなりになってるんですね。

山里亮太:あぁ。

町山智浩:それで、もう一つ彼らが守っているのはフード産業だけじゃなくて、穀物産業とかなんですよ。穀物が安くなっているっていう現状がなぜ存在するかというと、大量の補助金がアメリカ政府から出ているからなんですね、穀物に対して。

山里亮太:はい。

町山智浩:それで、アメリカの農業補助金ってほとんどが穀物に費やされるんですよ。補助金の84 %ですよ。それで、残りの15%は畜産なんです。牛肉なんですよ。

山里亮太:あぁ。

町山智浩:野菜には、ほとんど行かないんです。なぜならば、コーン、とうもろこしであるとか小麦っていうのは、牛肉もそうですけど、コングロマリットが存在するんです。巨大メジャーがいるんですよ。で、ものすごい圧力団体なんですよ。

赤江珠緒:あぁ、票になると。

町山智浩:そう。とうもろこしなんて、生産者原価ってタダ同然なんですよ。それで、補助金で暮らしてるんですよ。だから彼らはものすごい力を持っているので。野菜は力を持っていないんで、こうなってるんですね。それで、どうなったかっていうと、最近のアメリカ議会で「ピザは野菜である」って採決されたんですね。

赤江珠緒:えっ?ちょっと待って!?

町山智浩:ピザが排除されちゃうから、「ピザにはトマトソースが入っているから野菜なんだ」っていうことで、無理やりこの法律から排除されないようにしたんですよ。下院議会が採決したんです。ピザが野菜だっていう。

山里亮太:えっ、それ、上院は通らないですよね?

町山智浩:もう、なんでも通しちゃうんですよ。金が動いてるんだもん。裏で全部。

山里亮太:はぁ、凄いなそれ。

町山智浩:それがアメリカだっていうのが、映画『Fed Up』で描かれてて。もうたくさんだ、うんざりだっていうか、「どうするんだ、これ?」っていう映画でしたね。
赤江珠緒:どうするんだ、ですよね。

山里亮太:解決には全く向かっている兆しは見えてないわけですか?

町山智浩:見えてないですね。

赤江珠緒:アメリカの人、本当にすごく…。

山里亮太:太り方がちょっと変な太り方してる。

町山智浩:まあ、この法律でもって9割の給食がそれに従ってヘルシーにしてはいるんですけども。まあ、裏では巨大企業から離れていないという状態ですね。

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