映画評論家・町山智浩が語る、サイテーな男の半生『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』
2014.01.15 (Wed)
2014年01月14日放送のTBSラジオ系のラジオ番組『たまむすび』(毎週月-金 13:00 - 15:30)にて、レオナルド・ディカプリオがゴールデングローブ賞のコメディ部門で受賞した『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』について語っていた。
ウルフ・オブ・ウォールストリート

町山智浩(以下、町山):今回は、ゴールデングローブ賞コメディ部門の主演男優賞をとった、レオナルド・ディカプリオの『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』という映画を紹介します。
赤江珠緒(以下、赤江):はい。
町山:どういう話かと言うと、アメリカのホリエモンみたいな人の話ですよ。
山里亮太(以下、山里):ホリエモン?
赤江:凄い分かりやすい感じになりました(笑)
町山:そう、それだけでだいたい分かるって話なんですけどね。要するに、株を売って儲けて、そこに不正があったということで、実刑を食らって。
赤江:あぁ。
町山:20代から30代にかけて凄く若いのに、大金持ちになった男です。
赤江:これは、実在した方の話なんですか?
町山:えぇ。実在した事件なんです。それをレオナルド・ディカプリオが演じて、ゴールデングローブ賞をとってるんですけども。
山里:へぇ。
町山:とんでもない映画なんですよ。3時間もあるんです。
山里:おぉ。
町山:3時間近くあって、言ってはいけないFUCKって言葉ですけど、セリフの中に500回出てくるんですよ。
山里:えぇ!?どんな映画なんですか(笑)
町山:ずーっとその言葉を言ってるような映画なんです。エッチすることを言うんですけど、強調するときになんでも使って、悪いことにも良いことにも使うんですよ。
山里:え?
町山:日本語でもその傾向があって、寒いときに『クソ寒い』とか、若い子たち、やたらと使うでしょ?
山里:あぁ。
町山:『クソ可愛い』とか。間違ってると思うんだけど、英語使い方に近いんですよ。
山里:あぁ。強調する言葉なんですね。
町山:アメリカ的になってきたのかなって思うんですけどね。それを500回、ほとんどをディカプリオが言ってるんですけど(笑)…っていうのが、この『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』っていう映画なんですけど。
山里:「…っていうのが」って(笑)
町山:株、証券を売ってる人の話なんですけど、自分たちに気合を入れて売りまくるために、やたらとその言葉を使って、ハイになった状態で売るんですよ。
山里:ほぉ。キーワードなんですかね。
町山:ディカプリオ扮するジョーダン・ベルフォートって人は、25歳くらいでブラックマンデーっていう株価大暴落が起きた、1987年の直前にウォール・ストリートで働き始めるんですね。「株を買ってください」と電話セールスしてたんですけど。
山里:はい。
町山:そこに、マシュー・マコノヒーがやってくるんですよ。今回、ドラマ部門とコメディ部門で、アカデミー賞でレオナルド・ディカプリオとマシュー・マコノヒーは激突しますけど、その『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』冒頭でぶつかり合うんです。
山里:はい。
町山:マシュー・マコノヒーは、トップセールスマンなんです。新米のディカプリオに、「お前は言葉の使い方が甘すぎる。FU○K!FU○K!言いまくれFU○K!」って言うんです。マシュー・マコノヒーは、ディカプリオの師匠になるんです。
山里:へぇ。
町山:「酒とドラッグをやった状態で、ハイになった状態で株を売りまくれ!勃ったらその場でヌけ!」って言うんです。
赤江:ふふ(笑)
町山:どうかしてるでしょ?(笑)どうかしてるんですけど、「あぁ、そうか!」ってディカプリオは言うんです。それで、マシュー・マコノヒーが「証券マンに何が必要か知ってるか?」って訊くんです。
山里:はい。
町山:ディカプリオは「良い株をお客さんに教えてあげて…」って言うと、マシュー・マコノヒーは、「バカ!馬鹿なヤツからカネをぶんどることなんだよ!それが証券マンの仕事だ!」って言って、そこから映画が始まるんです。
赤江:身も蓋もない(笑)
町山:身も蓋もないんですよ。それで、次にはいきなりフェラーリが走ってくるんです。それは、数年後のディカプリオの姿なんです。「これ俺のクルマ」って言って。1988年くらいなんですけど、26歳で年収は49億円っていうんです。
山里:大成功をおさめて。
町山:それで、「足りなかったから悔しい。もうちょっと稼げば、週に1億円儲かったのに」って言うんです。
山里:おぉ!カッコイイ。
町山:フェラーリを飛ばしながら、隣に金髪の可愛い女の子が座ってて、ディカプリオにフェラーリしてるんですね。Wフェラーリで(笑)
山里:はっはっはっ(笑)町山さん、ブレーキ壊れちゃってるね(笑)お昼ってブレーキを(笑)
町山:クルマの車種を言っただけなんですけどね(笑)この映画は、ジョーダン・ベルフォートという人の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』っていう手記を元にしているんです。
山里:へぇ。
町山:めちゃくちゃな金儲け生活が延々と書かれてまして、ヘリポート付きの豪華ヨットを持ってたりするんです。
山里:え?ヨット?
町山:ヨットなんですけど、ヘリコプターが着陸できるようになってるんです。通勤には、ヘリコプターに乗って行くんですけど、その間に、ずっとドラッグやって、ラリラリでヘリコプターで飛んでいくんです。自分で飛んで行くんですけど。
赤江:めちゃくちゃ(笑)
町山:新しい証券会社を自分で作るんですけど、そこでは朝から晩まで、200人くらいが電話を掛けまくるんですね。顧客に。その間、裸のネエちゃんが行ったり来たりしてるんですよ。
山里:はぁ~。
町山:社内のトイレやエレベーターで、みんなヤリまくってるんです。とんでもない映画で、中学生以下は見れないですよ。ほとんどオッパイ出てますからね。
山里:あららら。
赤江:それでも大儲けしてるんですもんね。
町山:どうやって儲けてるかっていうと、普通の株を売ろうとした場合、良い銘柄は高いんですよ。だから、普通の人は手を出せない。安い株は、非常に不安定なんで、投資のプロは手を出さないんですよ。クズ株とかボロ株とか言われてるモノなんですけど、それをよく知らない株の素人に、売りつけるんです。
赤江:はい。
町山:「株なんかやったことないから分からない」って言われると、「大丈夫です。これは絶対に上がりますから」って言うんですね。「大した額じゃないから、たくさん買えます老後も安泰ですよ」って言って、売りつける。それを大量に「上がりますよ、上がりますよ」ってやって、いわゆる風説の流布っていうんですけど、それでバブル状態を作り出すんです。
山里:クズ株の価格が上がって。
町山:はい。クズ株が暴騰するんです。実は、それがトリックで。その会社は株を売ることで儲けてるわけではないんです。
山里:あ!
町山:レオナルド・ディカプリオ扮するジョーダン・ベルフォートたちは、売ってるクズ株を自分たちで持ってるんです。
赤江:はい。
町山:たくさん売りつけて、暴騰させることで、株価を上げるんです。その頂点で売るんです。
山里:うわ。
町山:売り抜けるんです。それで、株を売りつけられた人たちには、クズ株だけが残るんです。
山里:ヒドイ。
赤江:サギじゃないですか。
町山:サギなんです。風説の流布でホリエモンも有罪になりましたけど、昔からのテクニックなんですね。18世紀くらいからずっとあるテクニックで。
山里:へぇ。
町山:それをやって、ガンガン儲けていく。売りつけられたお客さんが、「株を手放したい」って言っても、なんだかんだ言って、手放させないんです。自分たちだけ売り抜けて。
山里:うわぁ。
町山:それでカネを儲けまくるんです。そういう映画です。
赤江:実際にあったことですもんね?
町山:実際にあったことです。自分も20代で、社員も20代なんですよ。
赤江:へぇ。
町山:大学も出てないし、親の家でいつまでも30過ぎて住んでるようなヤツをいっぱい集めてくるんです。それで「俺はセールストークが得意だから、俺の真似をしろ。相手はどうせ素人だ」って言って、徹底的にセールストークを教えるんですね。働いたこともないような人に。それで、ドンドンとカネを儲けていくんです。
赤江:はい。
町山:それで、証券取引等監視委員会とか、FBIとかが目をつけるんですけど、そこの社員たちは、悪いことをやってる自分たちが、カッコイイことだと思ってるんですね。
山里:あぁ。
町山:「俺達は馬鹿たちからカネをとるんだから、良いんだ!」ってドンドンとハイになっちゃって。とにかくディカプリオの相棒が出てくるんですけど、その俳優さんはジョナ・ヒルって人なんですけど、この人は『マネー・ボール』でブラッド・ピットの相棒をやってたデブちゃんなんですけど。
山里:はい。
町山:彼ら、めちゃくちゃなんです。とにかくパーティーで良い女がくると、その場でチン○ン出しちゃうんです。
赤江:あらあら(笑)
町山:本当にあったことらしいんですけど。ずっとめちゃくちゃをやってるところを見せる映画になってます。
赤江:結局、捕まったんですよね?
町山:捕まりました。マネーロンダリングで捕まるんですよ。スイスの銀行をつかってマネーロンダリングをするんですけど、そこもデタラメで(笑)
山里:とんでもないデタラメが、いっぱい見れるんだ(笑)
町山:どうしてこんなに杜撰でデタラメな連中が、こんなにカネを儲けたんだろうかってくらいデタラメなんです。
山里:ディカプリオさん、こんな役ばっかりじゃないですか?
赤江:そうなんです。『アビエイター』って映画だと、超潔癖症の大富豪が巨大な飛行機を作ろうとする映画だし、『J・エドガー』って映画では、FBIのフーバー長官が、自分はゲイなのに、それを隠すために他の人を追及していくっていう、イヤな役だったし。最近、ディカプリオはこんな役ばっかりですね。
赤江:そうですね。
町山:『ジャンゴ 繋がれざる者』では、黒人を徹底的に迫害する農場主やってましたけど。本当に悪くてね。あと、奥さんがたいていの映画で死んでます。
山里:あぁ、そうか。
町山:旦那として最低なんですよ。昔は、レオ様なんて言われてたんですけどね。間違った方にいっちゃった(笑)
赤江:そういう役もやって、良いんじゃないですかね。
町山:賞もとりましたからね。これでもディカプリオのファンはついてくるか、と(笑)
山里:観たいです。ヒドイけど(笑)
町山:逮捕されて、20年の実刑を食らうんですけど、実際はもう出てしまってるんです。刑を軽くしてもらった方法も後半で描かれてるんですけど、それもヒドイんですよ。人として最低なことをしてるんです(笑)
赤江:あぁ。
町山:今、ジョーダン・ベルフォートが何をしているかっていうと、この本を書いて何億円も儲けたんです。
赤江:え!?
町山:ジョーダン・ベルフォートは、お金儲けの方法を教えたり、セールストークのやり方を教えるセミナーを開いてそれで儲けてるんです。
赤江:ちょっとおかしくないですか。
山里:でも、ちょっと行ってみたいな(笑)
町山:行ってみたいって思うでしょ?これだけ実刑を食らったにも関わらず、人気が衰えないんです。
赤江:被害を受けた人、いっぱいいるはずなのに。
町山:日本にも、同じような人がいるじゃないですか(笑)
山里:そうか。
町山:彼が巨万の富を築いたのは確かだ。それにあやかりたいって思ってるんですね。彼は特別な人間だって思うんですね。
山里:あぁ…とんでもない映画(笑)
町山:とんでもない映画で、爆笑なんですけど、子供には見せられないですよ。フェラーリですからね(笑)
『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』は、1月31日公開となっている。
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ウルフ・オブ・ウォールストリート

町山智浩(以下、町山):今回は、ゴールデングローブ賞コメディ部門の主演男優賞をとった、レオナルド・ディカプリオの『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』という映画を紹介します。
赤江珠緒(以下、赤江):はい。
町山:どういう話かと言うと、アメリカのホリエモンみたいな人の話ですよ。
山里亮太(以下、山里):ホリエモン?
赤江:凄い分かりやすい感じになりました(笑)
町山:そう、それだけでだいたい分かるって話なんですけどね。要するに、株を売って儲けて、そこに不正があったということで、実刑を食らって。
赤江:あぁ。
町山:20代から30代にかけて凄く若いのに、大金持ちになった男です。
赤江:これは、実在した方の話なんですか?
町山:えぇ。実在した事件なんです。それをレオナルド・ディカプリオが演じて、ゴールデングローブ賞をとってるんですけども。
山里:へぇ。
町山:とんでもない映画なんですよ。3時間もあるんです。
山里:おぉ。
町山:3時間近くあって、言ってはいけないFUCKって言葉ですけど、セリフの中に500回出てくるんですよ。
山里:えぇ!?どんな映画なんですか(笑)
町山:ずーっとその言葉を言ってるような映画なんです。エッチすることを言うんですけど、強調するときになんでも使って、悪いことにも良いことにも使うんですよ。
山里:え?
町山:日本語でもその傾向があって、寒いときに『クソ寒い』とか、若い子たち、やたらと使うでしょ?
山里:あぁ。
町山:『クソ可愛い』とか。間違ってると思うんだけど、英語使い方に近いんですよ。
山里:あぁ。強調する言葉なんですね。
町山:アメリカ的になってきたのかなって思うんですけどね。それを500回、ほとんどをディカプリオが言ってるんですけど(笑)…っていうのが、この『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』っていう映画なんですけど。
山里:「…っていうのが」って(笑)
町山:株、証券を売ってる人の話なんですけど、自分たちに気合を入れて売りまくるために、やたらとその言葉を使って、ハイになった状態で売るんですよ。
山里:ほぉ。キーワードなんですかね。
町山:ディカプリオ扮するジョーダン・ベルフォートって人は、25歳くらいでブラックマンデーっていう株価大暴落が起きた、1987年の直前にウォール・ストリートで働き始めるんですね。「株を買ってください」と電話セールスしてたんですけど。
山里:はい。
町山:そこに、マシュー・マコノヒーがやってくるんですよ。今回、ドラマ部門とコメディ部門で、アカデミー賞でレオナルド・ディカプリオとマシュー・マコノヒーは激突しますけど、その『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』冒頭でぶつかり合うんです。
山里:はい。
町山:マシュー・マコノヒーは、トップセールスマンなんです。新米のディカプリオに、「お前は言葉の使い方が甘すぎる。FU○K!FU○K!言いまくれFU○K!」って言うんです。マシュー・マコノヒーは、ディカプリオの師匠になるんです。
山里:へぇ。
町山:「酒とドラッグをやった状態で、ハイになった状態で株を売りまくれ!勃ったらその場でヌけ!」って言うんです。
赤江:ふふ(笑)
町山:どうかしてるでしょ?(笑)どうかしてるんですけど、「あぁ、そうか!」ってディカプリオは言うんです。それで、マシュー・マコノヒーが「証券マンに何が必要か知ってるか?」って訊くんです。
山里:はい。
町山:ディカプリオは「良い株をお客さんに教えてあげて…」って言うと、マシュー・マコノヒーは、「バカ!馬鹿なヤツからカネをぶんどることなんだよ!それが証券マンの仕事だ!」って言って、そこから映画が始まるんです。
赤江:身も蓋もない(笑)
町山:身も蓋もないんですよ。それで、次にはいきなりフェラーリが走ってくるんです。それは、数年後のディカプリオの姿なんです。「これ俺のクルマ」って言って。1988年くらいなんですけど、26歳で年収は49億円っていうんです。
山里:大成功をおさめて。
町山:それで、「足りなかったから悔しい。もうちょっと稼げば、週に1億円儲かったのに」って言うんです。
山里:おぉ!カッコイイ。
町山:フェラーリを飛ばしながら、隣に金髪の可愛い女の子が座ってて、ディカプリオにフェラーリしてるんですね。Wフェラーリで(笑)
山里:はっはっはっ(笑)町山さん、ブレーキ壊れちゃってるね(笑)お昼ってブレーキを(笑)
町山:クルマの車種を言っただけなんですけどね(笑)この映画は、ジョーダン・ベルフォートという人の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』っていう手記を元にしているんです。
山里:へぇ。
町山:めちゃくちゃな金儲け生活が延々と書かれてまして、ヘリポート付きの豪華ヨットを持ってたりするんです。
山里:え?ヨット?
町山:ヨットなんですけど、ヘリコプターが着陸できるようになってるんです。通勤には、ヘリコプターに乗って行くんですけど、その間に、ずっとドラッグやって、ラリラリでヘリコプターで飛んでいくんです。自分で飛んで行くんですけど。
赤江:めちゃくちゃ(笑)
町山:新しい証券会社を自分で作るんですけど、そこでは朝から晩まで、200人くらいが電話を掛けまくるんですね。顧客に。その間、裸のネエちゃんが行ったり来たりしてるんですよ。
山里:はぁ~。
町山:社内のトイレやエレベーターで、みんなヤリまくってるんです。とんでもない映画で、中学生以下は見れないですよ。ほとんどオッパイ出てますからね。
山里:あららら。
赤江:それでも大儲けしてるんですもんね。
町山:どうやって儲けてるかっていうと、普通の株を売ろうとした場合、良い銘柄は高いんですよ。だから、普通の人は手を出せない。安い株は、非常に不安定なんで、投資のプロは手を出さないんですよ。クズ株とかボロ株とか言われてるモノなんですけど、それをよく知らない株の素人に、売りつけるんです。
赤江:はい。
町山:「株なんかやったことないから分からない」って言われると、「大丈夫です。これは絶対に上がりますから」って言うんですね。「大した額じゃないから、たくさん買えます老後も安泰ですよ」って言って、売りつける。それを大量に「上がりますよ、上がりますよ」ってやって、いわゆる風説の流布っていうんですけど、それでバブル状態を作り出すんです。
山里:クズ株の価格が上がって。
町山:はい。クズ株が暴騰するんです。実は、それがトリックで。その会社は株を売ることで儲けてるわけではないんです。
山里:あ!
町山:レオナルド・ディカプリオ扮するジョーダン・ベルフォートたちは、売ってるクズ株を自分たちで持ってるんです。
赤江:はい。
町山:たくさん売りつけて、暴騰させることで、株価を上げるんです。その頂点で売るんです。
山里:うわ。
町山:売り抜けるんです。それで、株を売りつけられた人たちには、クズ株だけが残るんです。
山里:ヒドイ。
赤江:サギじゃないですか。
町山:サギなんです。風説の流布でホリエモンも有罪になりましたけど、昔からのテクニックなんですね。18世紀くらいからずっとあるテクニックで。
山里:へぇ。
町山:それをやって、ガンガン儲けていく。売りつけられたお客さんが、「株を手放したい」って言っても、なんだかんだ言って、手放させないんです。自分たちだけ売り抜けて。
山里:うわぁ。
町山:それでカネを儲けまくるんです。そういう映画です。
赤江:実際にあったことですもんね?
町山:実際にあったことです。自分も20代で、社員も20代なんですよ。
赤江:へぇ。
町山:大学も出てないし、親の家でいつまでも30過ぎて住んでるようなヤツをいっぱい集めてくるんです。それで「俺はセールストークが得意だから、俺の真似をしろ。相手はどうせ素人だ」って言って、徹底的にセールストークを教えるんですね。働いたこともないような人に。それで、ドンドンとカネを儲けていくんです。
赤江:はい。
町山:それで、証券取引等監視委員会とか、FBIとかが目をつけるんですけど、そこの社員たちは、悪いことをやってる自分たちが、カッコイイことだと思ってるんですね。
山里:あぁ。
町山:「俺達は馬鹿たちからカネをとるんだから、良いんだ!」ってドンドンとハイになっちゃって。とにかくディカプリオの相棒が出てくるんですけど、その俳優さんはジョナ・ヒルって人なんですけど、この人は『マネー・ボール』でブラッド・ピットの相棒をやってたデブちゃんなんですけど。
山里:はい。
町山:彼ら、めちゃくちゃなんです。とにかくパーティーで良い女がくると、その場でチン○ン出しちゃうんです。
赤江:あらあら(笑)
町山:本当にあったことらしいんですけど。ずっとめちゃくちゃをやってるところを見せる映画になってます。
赤江:結局、捕まったんですよね?
町山:捕まりました。マネーロンダリングで捕まるんですよ。スイスの銀行をつかってマネーロンダリングをするんですけど、そこもデタラメで(笑)
山里:とんでもないデタラメが、いっぱい見れるんだ(笑)
町山:どうしてこんなに杜撰でデタラメな連中が、こんなにカネを儲けたんだろうかってくらいデタラメなんです。
山里:ディカプリオさん、こんな役ばっかりじゃないですか?
赤江:そうなんです。『アビエイター』って映画だと、超潔癖症の大富豪が巨大な飛行機を作ろうとする映画だし、『J・エドガー』って映画では、FBIのフーバー長官が、自分はゲイなのに、それを隠すために他の人を追及していくっていう、イヤな役だったし。最近、ディカプリオはこんな役ばっかりですね。
赤江:そうですね。
町山:『ジャンゴ 繋がれざる者』では、黒人を徹底的に迫害する農場主やってましたけど。本当に悪くてね。あと、奥さんがたいていの映画で死んでます。
山里:あぁ、そうか。
町山:旦那として最低なんですよ。昔は、レオ様なんて言われてたんですけどね。間違った方にいっちゃった(笑)
赤江:そういう役もやって、良いんじゃないですかね。
町山:賞もとりましたからね。これでもディカプリオのファンはついてくるか、と(笑)
山里:観たいです。ヒドイけど(笑)
町山:逮捕されて、20年の実刑を食らうんですけど、実際はもう出てしまってるんです。刑を軽くしてもらった方法も後半で描かれてるんですけど、それもヒドイんですよ。人として最低なことをしてるんです(笑)
赤江:あぁ。
町山:今、ジョーダン・ベルフォートが何をしているかっていうと、この本を書いて何億円も儲けたんです。
赤江:え!?
町山:ジョーダン・ベルフォートは、お金儲けの方法を教えたり、セールストークのやり方を教えるセミナーを開いてそれで儲けてるんです。
赤江:ちょっとおかしくないですか。
山里:でも、ちょっと行ってみたいな(笑)
町山:行ってみたいって思うでしょ?これだけ実刑を食らったにも関わらず、人気が衰えないんです。
赤江:被害を受けた人、いっぱいいるはずなのに。
町山:日本にも、同じような人がいるじゃないですか(笑)
山里:そうか。
町山:彼が巨万の富を築いたのは確かだ。それにあやかりたいって思ってるんですね。彼は特別な人間だって思うんですね。
山里:あぁ…とんでもない映画(笑)
町山:とんでもない映画で、爆笑なんですけど、子供には見せられないですよ。フェラーリですからね(笑)
『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』は、1月31日公開となっている。
【関連記事】
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