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脳科学者・茂木健一郎「東大入試のような偏差値教育が日本をダメにする」

2013.11.04 (Mon)
2013年11月03日の「全力教室」にて、現役東大生17名を相手に、茂木健一郎が講義・討論を行うという主旨の番組が放映されていた。

偏差値教育の否定

茂木健一郎「まず冒頭に、言いたいことがあります。世間からすると東大生というのは、『エリート』『賢く』『将来を期待されている』というイメージだと思うわけ。僕も18歳はのときはそう思ってました」

茂木健一郎「出発点は、君たちと同じように、ある種のプライドがあったわけよ。でも、世界の色んなところに行って、ケンブリッジ大学に留学して、底知れない恐怖みたいなのを抱くようになったわけ。『もうダメだな』って。そう言われたら腹立つ?(笑)」

茂木健一郎「最初に訊いていいかな。入試で君たちのような東大生を選んでいるっていうのは、良い事だと思ってる?」

東大生による挙手。偏差値教育賛成派 14/17であった。

茂木健一郎「圧倒的に多くの人が、偏差値入試が良いって考えてるわけだよね。でも、僕は偏差値入試こそが諸悪の根源だと思っています」

世界大学ランキングの中の東大

世界大学ランキング2013 Quacquarelli Symonds(QS)
1位:MIT マサチューセッツ工科大学
2位ハーバード大学
3位:ケンブリッジ大学
4位:UCL ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン 
5位:インペリアル・カレッジ・ロンドン
6位:オックスフォード大学
7位:スタンフォード大学
8位:イェール大学
9位:シカゴ大学
10位:カルフォルニア工科大学

茂木健一郎「世界大学ランキング。僕の行ってたケンブリッジは、3位。では、東大は何位だか知ってます?」

東大生「15位くらい?」

茂木健一郎「東大は32位でした。このランキングについて、どう思いますか?」

東大生「まず、その基準が分からない。どのようにランキングを決めているのか」

注釈:東大は学術面は高いが、卒業後の評価が低くなっている。100位中、日本の大学は6校ランキング入りしている。

茂木健一郎「32位っていうのは不当か?適切なんだろうか?」

茂木健一郎「では訊くが、君たちの偏差値ってどれくらいだったんだ?」

東大生「70くらいですね」

茂木健一郎「その基準は適切か?」

東大生「入試においては適切だったと思います」

茂木健一郎「それはどうして?」

東大生「入試においては客観的だったんで」

アメリカでの大学入試

茂木健一郎「みんな偏差値高いんだよね。ちょっと訊きたいんだけど、アメリカの入試で偏差値って無いよね。なんで無いの?どこにも、ペーパーテストの点数だけで選ぶなんてことがないのよ」

茂木健一郎「私の友人で市川海老蔵がいるんだけど、彼は教科書を開いたことがないっていうわけ。その彼を、ハーバード大学は、入学させる可能性があるわけ。でも、東大は絶対に入らない。なんで?それはペーパーテストだけで決めるからだよね」

東大生「物事に対して、目標を立てて努力していく力っていうのは、その数字である程度測れると思います」

茂木健一郎「では、ちょっと視点を変えて質問してみよう。東大に受かった人は、何%くらい進学するの?99%くらいだよね。なんで?なんでお前らは東大に来たの?」

東大生「東大が日本で一番良くて、デキる人がくる確率が一番高いから入学しました」

茂木健一郎「そこを今まで議論してきたんだけど、デキるってなんだ?」

東大生「東大は処理能力の高い生徒でしょうか。処理能力の高い人間を求めてるから、偏差値で入学させるのは妥当なんじゃないですか?」

茂木健一郎「世の中が求めてるのは、処理能力の高い人間なの?」

東大生「世の中ではなく、東京大学が求めてるのが処理能力の高い人間です」

茂木健一郎「お前は、処理能力の高い大学に入ったの?それで良いの?」

東大生「僕は東大ってネームバリューが欲しくて入ったので」

茂木健一郎「ネームバリューが欲しかったのかぁ…そうか」

あるべき入試の姿-公平性の確保

茂木健一郎「東大は入試で、1点でも高い生徒ということで選ばれてるわけ。でも、ハーバード大学は、OBが面接するんですよ。1時間とか2時間。だからたとえば、俺が面接して、レポートを書くわけなんだよな。どう思う?そのことについて。根本的に思考方法が違うわけ」

茂木健一郎「そうなると、お前らは困るよね?どうして?適切じゃない、公平じゃないって思うわけでしょ?では、どういう入試が公平なの?点数が1点でも高い人間を選ぶのが、果たして公平といえるんだろうか」

東大生「機関としての大学を見るのであれば、ペーパーテストだけで良いと思うんですけども」

茂木健一郎「じゃあ、たとえば君が彼女を選んだ理由ってなに?」

東大生「自分と気が合ったから」

茂木健一郎「偏差値で選んだんじゃないの?」

東大生「彼女を選んだというのは、自分と気が合ったから付き合うっていうのは、それで良いと思うんです。でも、入試はそうはいかない。面接者と気が合ったから入れる、というのでは客観性がないんです。そこに、点数という指標を入れることで、客観性を入れることができると思うんです」

茂木健一郎「ふふ(笑)先走るな、やっぱり頭が良いから(笑)」

茂木健一郎「君らは、彼女をセンター試験の得点で選んだりはしないよね。一方で、アメリカは大学に入学させる生徒を選ぶプロセスが、彼女を選ぶようなプロセスに非常に近いんだ」

茂木健一郎「主観なんです。ハーバード大学は。ハーバード大学は私立大学だから、ハーバード大学がどのように生徒を選ぶかは、勝手だよね」

東大生「ハーバード大学がそうであっても、僕は東大が偏差値で選ぶのは間違いではないと思います」

茂木健一郎「なんで間違いだと思わないの?」

東大生「それが一番公平だから。客観的であるからです」

茂木健一郎「客観的である必要はあるの?それぞれの大学が、『我々はこのようなポリシーで生徒を選ぶ』って言えば良いわけだろ?では、なんで日本はダメなの?」

東大生「たとえば、面接官って1人だけではないですよね。何人か面接官がいる。そうなると、それぞれの面接官で基準が異なるわけじゃないですか。そこで、不公平性が出てきてしまうと思うんです」

現行の入試の不公平性

東大生「点数による入試の、先生の考える不公平な点ってなんですか?」

茂木健一郎「たとえば、サヴァン症候群って知ってるかな?」

サヴァン症候群
知的能力が低くない自閉症のことを高機能自閉症と呼び、また、知的能力の優劣に関わらず、記憶力など、一部の分野で驚異的な能力を有する場合もあり、その驚異的な能力を有する者をサヴァン症候群と呼ぶ。

レインマン」のモデルのキム・ピークもサヴァン症候群と言われている。
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茂木健一郎「アルヴェルト・アインシュタインが5歳まで喋れなかったって知ってる?恐らく、アインシュタインは自閉症だろうって言われてるの。そういう人に、今のような入試での評価を当てはめたら、気の毒だよね」

茂木健一郎「基本的に、大学って個人の集まりでしょ?その大学に、先輩としてお前らがどのような生徒を入れたいと思う?『こいつ入れたら良いんじゃないの?』って推薦して、何が悪いの?」

東大生「それは公平じゃないんじゃないですか?」

茂木健一郎「さっきから言ってるけど、公平ってなんなの?」

東大生「点数を測るのは、公平の一つの形だと思います」

茂木健一郎「でも、ペーパーテストが苦手な人には、公平ではないよね」

東大生「努力が、報われやすい形ですから」

茂木健一郎「どんな努力なんだよ。あんなクダらねぇ入試の勉強をするのが努力か?人間って、尖り方って全然違うじゃん。伸びる方向って、それぞれ違うんだよ。なんでそれを一つのペーパーテストで測れるんだよ」

東大生「茂木先生がおっしゃる人たちが、みんな大学に入れるようにしなきゃいけないんですか?」

茂木健一郎「違います。大学が、最大の付加価値を生み出すには、色んな人達がそれぞれ好きな方向に個性を伸ばす、それでコミュニティを作らなければいけないって思うからです」

茂木健一郎「TEDって会議を知ってます?毎年、ロングビーチで行われる会議なんですが、そこではビル・ゲイツさんなどが来ているんですが」

TEDトーク 世界最高のプレゼン術
TEDトーク 世界最高のプレゼン術

茂木健一郎「僕は日本人で初めて、そこでプレゼンしたんですけど」

茂木健一郎「そこに、高校生が出てきたんだよ」

注釈:高校生とは、ジャック・アンドレイカ。彼は、カーボンナノチューブを利用した膵臓癌の早期発見方法を開発。3歳で数学・化学に興味を持ち、数学や科学のコンテストで入賞。

茂木健一郎「高校の時から入試に向けて勉強してきたヤツらと、高校の時からカーボンナノチューブの研究をして、検査薬を作る勉強をしてきたヤツ、どちらが良いと思う?」

東大生「ジャック・アンドレイカは、カーボンナノチューブのことを研究したいって、始めから分かってたわけですよね。でも、そうしたやりたいことがない人達は、それで遊ぶんだったら勉強してた方が良いと思うんですよ」

茂木健一郎「君はやりたいことがなかったんだよな。どうして?」

東大生「あまり世界のことを知らなかったからです」

茂木健一郎「もし君が、カーボンナノチューブで膵臓癌の早期発見検査薬を作りたいって思ったとする。それで、各大学に『こういう研究をしたいんです』って手紙を送ったとする。そのようなことをしてたら、日本の大学に受かるかな?」

東大生「受からないです」

茂木健一郎「でも、アメリカは受かるんだよ」

茂木健一郎「ノーベル賞受賞者の出身大学は、多くは有名大学ではないんですよ。ここから何を考える?」

東大生「テストで点数を決めるんじゃなく、好き勝手にやってる気がします」

茂木健一郎「アメリカでは、ハーバード大学に受かっても、近所だからって理由で、近くの大学に行くって人がいるわけ。正直、日本の大学って、偏差値以外に特色がない。そうではなく、『こういう学生が欲しい』『このように運営したい』って特色があってしかるべきだと思うんだ」

茂木健一郎「大学は、いわば4年間続くパーティーさ。パーティーのメンバーをどのように選びたいの?」

偏差値偏重の教育の問題点

茂木健一郎「海老蔵だったら、古典芸能の第一人者さ。それを評価して、ハーバード大学だったら、入れる可能性があるってことさ」

茂木健一郎「一方で、数学が得意な人が、高校の時に数論の論文を書いてても良いわけじゃない。それをなんで、18歳のときまで、あんなくだらない勉強しなきゃいけないんだよ。『東大の問題は良問だ』なんて抜かしやがるけどな」

茂木健一郎「俺は東大なんて大学、余裕で入ったよ。俺は、小学校の時から、蝶の研究をしてたの。日本鱗翅学会ってところに入って。そんなこと、東大の入試では訊かれたことないよ。ハーバード大学だったら、入学用紙にそれが書けたかもしれないんだよ」

茂木健一郎「俺は東京大学にとって、単なる数字(偏差値)だったんだよ。個性も何もない。それをなんで公平なんて言うんだよ。おかしくないか?」

茂木健一郎「ただ、悔しいんだよ。18歳まで頑張ったんだろ?間違った方向の努力をしてしまっている。日本では、どうして高校までにやりたいことが見つからないんだろうか?」

茂木健一郎「人それぞれ、長所というものがある。高校の時から、何をやっても良いっていうんだったら、みんなの意識は違ったんじゃないかな。もっと別のことに向けよう、ということになったんじゃないだろうか」

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タグ : 茂木健一郎,東京大学,入試,

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