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ジブリ・鈴木敏夫「スターウォーズ以降に変化した映画の『テーマ』」

2013.09.30 (Mon)
2013年09月29日放送の「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」にて、スターウォーズ以降、映画のテーマが変化した、と語られていた。

この内容が語られたのは、雑誌『SPUR (シュプール)』7月号の朝井リョウ(『桐島、部活やめるってよ』で知られる直木賞作家)×ジブリ・鈴木敏夫プロデューサーの対談だった。

何者 朝井リョウ
何者

「哲学」を必要とするようになった映画

鈴木敏夫「ハリウッドってところはね、ちょうどスターウォーズが作られた頃に、それまで作ってきた映画と、それ以降の映画で、一変するんですね」

朝井リョウ「はい」

鈴木敏夫「それは何かと言ったら、それまでハリウッドってところは、映画は何をテーマに作ってきたかというと、『LOVE』なんですね」

朝井リョウ「はい」

鈴木敏夫「歴史劇であろうが、ギャング映画であろうが、西部劇であろうが、全てテーマは『LOVE』だったんですね」

朝井リョウ「えぇ」

鈴木敏夫「だから、『生きるってのはどういうことか』なんていうテーマは、あまり関係なかったんですね」

朝井リョウ「あぁ」

鈴木敏夫「愛する/愛さない、なんですよ」

朝井リョウ「はい」

鈴木敏夫「僕は、スターウォーズのプロデューサーと知り合って、そこで教えられたんだけど、『これからの映画は、LOVEではない。philosophyである』と」

朝井リョウ「哲学ですね」

鈴木敏夫「そう。『これからの映画は、哲学である』と。そういう要素が入ってないと、お客さんは観てくれない、と。僕、ビックリしたんですよ(笑)」

朝井リョウ「そのお話、前も伺って、凄い好きなんですけど。根底にあるものが、どんどん変わっていくんですよね」

鈴木敏夫「その(哲学の)要素が入ってないものは、お客さんは観る気にならない。要するに、ヒット映画にならないってことなんです」

朝井リョウ「はい」

鈴木敏夫「そんな要素を入れようと思わないならば、『ダースベイダーが父親だった』なんて要素は入ってこないんだ、と。そこがスターウォーズとそれ以前の映画の違いなんだ、と」

朝井リョウ「はい」

鈴木敏夫「たしかに、それ以降の映画を観ていると、たしかにそうした要素が入っている。まさしく宮崎駿なんかそうでしょ?」

朝井リョウ「そうですね。メタファーのようなものがあって。みんなが考えるんですよね」

「自分」というものを認識するようになった現代

鈴木敏夫「朝井さんの『何者』も明らかにそうだけど、『自分』というものを人類が発見したのは、19世紀頃なんですよね」

朝井リョウ「はい」

鈴木敏夫「フロイトなどが出てきて、それ以前は強く自分というものを意識することはなかったはずなんですよね」

朝井リョウ「『自分』すら、見つけるようになってきたんですよね」

鈴木敏夫「自分を見つけてしまったが故に、人間は不幸になってしまった」

朝井リョウ「不幸?」

鈴木敏夫「辛いよね(笑)だって、芸術なんて言葉も、『自分』の発見と関係あったでしょ?レオナルド・ダ・ヴィンチであろうとミケランジェロだろうと、『これ作って』って言われて、注文に応じるわけでしょ?」

朝井リョウ「はい」

鈴木敏夫「そうすると、そこには『自己表現』だの『自己実現』だのっていうのは、概念として無いわけでしょ?」

朝井リョウ「はい」

鈴木敏夫「頼まれたものを作る」

朝井リョウ「今は、『自己表現、自己実現』ばかりですからね」

鈴木敏夫「だらけでしょ?(笑)そのことを、朝井さんは、象徴的に扱ってらっしゃるんで、だからこそ、共感するお客さんというか、読者が多いって気がしてて」

朝井リョウ「えぇ」

鈴木敏夫「そうすると(自己表現、自己実現が求められ)、『自尊心だけで、その次はどうするの?』ってことになるんですよね」

朝井リョウ「そうなんですよね(笑)『桐島、部活やめるってよ』の時も、対談でお話させていただいたんですけど、『青春も見つけられたものである』って」

鈴木敏夫「発見なんだよね」

朝井リョウ「そう。若い人が悩む=尊いっていうのは、後から価値をつけられたものであって」

鈴木敏夫「うん」

朝井リョウ「『元々あったものではないから、いつかその青春っていうものに関しても、別のものが取って代わるだろう』って鈴木さんがお話されてたのが、凄い頭に残ってて」

鈴木敏夫「青春時代だけが素晴らしいなんて、ウソに決まってんじゃない(笑)」

朝井リョウ「付加価値ですよね。後から、名前や価値をつけられたってお話に、『あぁ、そうか』って思って。凄くそれが印象的だったんです」

鈴木敏夫「ふふ(笑)」

朝井リョウ「次は、『自分ってものが無い』ことにいくんじゃないかって」

鈴木敏夫「一番、先進的な考え方でいったら、そうだよね。まだ若いから、それに(『自分』というものの意味を問いかけるもの以外に)チャレンジして欲しいなぁって(笑)」

朝井リョウ「超難しい(笑)」

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