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ジブリ・鈴木敏夫「映画『風立ちぬ』のもう一つのエンディング」

2013.09.30 (Mon)
2013年09月29日放送の「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」にて、映画『風立ちぬ』で当初考えられていた、公開された作品とは異なるエンディングがあったことについて語っていた。

風立ちぬ
フィルムコミック 風立ちぬ(上) (アニメージュコミックス) (アニメージュコミックススペシャル フィルムコミック)

この内容が語られたのは、雑誌『SPUR (シュプール)』7月号の朝井リョウ(『桐島、部活やめるってよ』で知られる直木賞作家)×ジブリ・鈴木敏夫プロデューサーの対談だった。

朝井リョウが捉えた映画「風立ちぬ」

朝井リョウ「『風立ちぬ』は、戦争に対する意見というのは、作品に対して落とし込むわけでなくて、『美しい飛行機を作りたい』というところが、一本の大きな筋になっていて」

鈴木敏夫「はい」

朝井リョウ「夢を追いかける男の話じゃないですか。そこに触れてもらいたいですよね。小さい子供にこそ観てもらいたいですね」

鈴木敏夫「そうですか、なるほど」

朝井リョウ「純粋ん夢を追い求める男の半生の話だから」

鈴木敏夫「うん」

朝井リョウ「僕がジブリの登場人物が好きなのは、『客観性が無いところ』なんですけど」

鈴木敏夫「はい(笑)」

朝井リョウ「堀越二郎は、まさにですよね(笑)本当に客観性が無くて、自分の見たもの、感じたものを追いかけていく姿が、あまり今、生み出せるキャラクターじゃないじゃないですか。色んなところに客観性ってあるから

鈴木敏夫「はい」

朝井リョウ「どうしても協調性が無いと、上手く生きていけないって時代になってきているので。二郎があの客観性の無さで、真っ直ぐに生きていく姿は、スゴイ励まされたんです」

鈴木敏夫「なるほど」

朝井リョウ「鈴木さん仰ってましたけど、宮崎駿さんが描く男女は、『出会ったときから好き同士なんだ』っていうのは、まさにその流れの中にあるなって思って。その時に、『あぁ、ジブリ観てるなぁ』って思ったんです」

鈴木敏夫「ホッとしたよね、確かに」

朝井リョウ「そうなんですか?」

鈴木敏夫「ファンタジーとちょっと違うでしょ?今回は、"本当の話"だから」

朝井リョウ「はい」

鈴木敏夫「ファンタジーの世界だったら、夢の飛行機を作って、空中戦もできる。でも、出来ないでしょ?」

朝井リョウ「はい」

鈴木敏夫「どうするんだろうって思って(笑)」

朝井リョウ「観ながら、作った飛行機が色んなことに使われたってことはみなさんご存知のことじゃないですか。そこをどう描くんだろうなぁってドキドキしながら観てたんですけど」

鈴木敏夫「うん」

朝井リョウ「最後、1機も帰ってこなかった、と。その飛行機がどのように使われたのかということを示唆するシーンが出てきて」

鈴木敏夫「はい」

朝井リョウ「でも、次に『1機も帰ってこなくて空を飛ぶ、というのは呪われた夢だ』ということを話したあとに、『力を尽くして生きていかねばならない。一日一日を大切に生きていかなくてはいけない。それでも生きていかねばならない』ってところが提示されたので、凄いホッとしました」

鈴木敏夫「あぁ」

朝井リョウ「美しい飛行機を作る、という夢は叶いましたけど、その後に1機も帰ってこなかったという絶望を味わって、夢の中で、現実ではないかもしれないけれどカプローニと出会い、『それから先も生きていかねばならない』と言われたのは良かったです」

当初考えられていた「別エンディング」

鈴木敏夫「本当はラストシーン、違ってたんですよ」

朝井リョウ「そうなんですか?」

鈴木敏夫「菜穂子が『生きて』って言うでしょ?」

朝井リョウ「はい」

鈴木敏夫「あれは最初、『来て…』だったんです」

朝井リョウ「えぇ?!超コワイ話だ(笑)一文字変わるだけで」

鈴木敏夫「いいネタだけどね(笑)」

朝井リョウ「鳥肌立ちました(笑)」

鈴木敏夫「『君は生きねばならん』は無かったんですよ」

朝井リョウ「そうだったんだぁ」

鈴木敏夫「最初の案は、ちょっとしたセリフで『こんなことできるんだ』って思って、僕はそれを見ちゃったんだけど。3人(堀越二郎、菜穂子、カプローニ)とも死んでるんですよ

朝井リョウ「たしかに、それを聞くとカプローニの『ワインでも飲もうか』ってセリフも、そちら(死後の世界)に誘(いざな)われていくって終わり方に見えますね」

鈴木敏夫「カプローニと、二郎は煉獄(すぐには天国へ行けない霊魂が、苦しみを受けながら浄化され最後の審判を待つとされる場所)にいるんです」

朝井リョウ「あぁ」

鈴木敏夫「彼女(菜穂子)は、もう亡くなっている。それで、二郎を呼びにきた、という」

朝井リョウ「あぁ~」

鈴木敏夫「その前に、『美味しいワインがあるから飲んで行かないか?その後でも(死ぬのは)良いだろう?』って話だったんですよ」

朝井リョウ「へぇ~」

鈴木敏夫「そうなってたらどう思います?」

朝井リョウ「そうなってたら…結構、ショックだなぁ、たしかに。僕は、夢が潰えた後の肯定的な部分というのを、期待を持って受け入れたところがあったので」

鈴木敏夫「僕も悩んでるんです」

朝井リョウ「それは、夢が潰えた後で、どう使うかってことで悩んでるってことですか?…そういう『THE END』っていうのは、実際はつけづらいものですよね。でも、本とか映画って、どこかで『THE END』ってつけなきゃいけないから」

鈴木敏夫「うん」

朝井リョウ「それはどうしても折り合いがつけないまま、僕も小説を書いてるんですけどね。映画を作る人もそうなのかなぁ、と」

鈴木敏夫「映画なんか特に、2時間足らずで終わっちゃうからね。人の人生を。でも、実際の人生は続いていくわけだから」

朝井リョウ「そうなんですよ。今回は、特に実際にいらっしゃった話だから。その後に、零戦がどのように使われたか、というのは皆さんご存知だから。海軍の無理難題を押し付けられたその飛行機が、無事に飛んでみんな歓喜する中、一人で嬉しくなさそうな二郎がいるなぁって」

鈴木敏夫「はい」

朝井リョウ「色んなことが後になって、思い起こされて。それで人と喋って、『あれはこうだったんじゃない?』って話ができて。良い映画だなぁって思って」

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タグ : 風立ちぬ,宮崎駿,鈴木敏夫,朝井リョウ,

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