映画評論家・町山智浩「映画で学ぶことができる恋愛」
2013.09.10 (Tue)
2013年09月10日放送の「たまむすび」にて、映画評論家・町山智浩が「トラウマ恋愛映画入門」を上梓し、映画で学ぶ恋愛について語っていた。

町山智浩「怪獣とかクンフー映画とか、車が爆発する映画だけじゃなく、僕もおっぱいやお尻の映画好きなんですよ(笑)でも、そこまでなんです」
「ところが、『女性は心を考える』んですね。でも、男って心のことを考えないんですよ、実は。驚きかもしれないけれど」
「実際、俺だけ鈍いのかなって色んな映画を観てて分かったんですけど、巨匠と呼ばれるスタンリー・キューブリックであったり、フェデリコ・フェリーニであったり、ウッディ・アレンであったり、アルフレッド・ヒッチコックの映画であっても、ほとんど男は身勝手で相手の女の人のこと考えてないんですよ」
「しかも、その手の映画って、巨匠の恋愛体験を元にしてるのが多いんです。身勝手で女性をボロカスに傷つける映画ばかりを、世界の巨匠たちは撮ってるわけですよ。尊敬されてる人たちが」
「岡目八目って言葉があって、将棋や碁を打ってる人より、横から見てる人の方が良く見えてて。でも、自分がやると分からなくなるんですよね。巨匠も、自分の恋愛の中では分かってないんですよ。ただ、それを映画にするから、観客には分かるんですね」
町山智浩「フランソワ・トリュフォーって監督がフランスにいるんですけど、その人は恋愛映画ばっかり作り続けた人なんです。ところがこの人の最後の方の映画で、『隣の女』って映画があるんですけど、その中ですごく重要な言葉があって。『男はみんな恋愛のアマチュアだ』って言葉があるんですね」
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「しかも、これは60歳を過ぎた男性の言葉として出てくるんですね。男はね、ダメなんですよ(笑)あまちゃんなんですね(笑)分かってないって、女性はイライラするんですね」
「どう分かってないかって、凄く分析的なセリフがいくつも出てくるんです。だから、トリフォーって、恋愛分かってるのかなって思ったら、この『隣の女』の試写を観たトリフォーの前の彼女であるカトリーヌ・ドヌーブが『あそこで出てくる教訓的な言葉は、ほとんど私が彼に言ったのよ』って言うんですよ(笑)つまりは、彼も分かってないんですよ(笑)女性に怒られたことをまとめて映画にしてるだけで」
「女性は基本的に、恋愛に関してアマチュアじゃないんですね。男は、大学教授ですらダメなんですよ(笑)」
町山智浩「『アルフィー』って映画は、高見沢さんとかがいるグループの元になったものです。ここからとってるんですよ、アルフィーってバンド名は」
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「ヒドイ男の話なんですよね。女の子を次々にナンパするんだけど、愛さないんです。『愛したら負けだ』って言うんです。このテーマソングは、『あなたは恋愛を弱肉強食だと思ってるの?』っていう歌なんですね。彼自身も、本当にそう思ってるんです。愛しているって思ったら、降参しなきゃならないんだ、負けなんだって思うから、次々に女性を乗り換えて行くって話なんですね」
「ヒドイ話なんですけど、それで思うのは、何十人とエッチしてるのに、女性のことを全く分かってないんですよ。人の心が全く分かってないんです。これは童貞と一緒ですよね」
「僕の知り合いで、直接のお友達じゃないんですけど、叶井俊太郎って男がいまして、その男は600人とヤったんですね。本も出してるんです」
ダメになってもだいじょうぶ―600人とS○Xして4回結婚して破産してわかること

「600人とヤって、4回結婚して何が分かったんだろうかって思って読むと、何も分かってないんですよ(笑)分からないからこそ、そんな600人もヤリ捨ててきたんでしょうね。分かってないからこそ、出来ることなんでしょうね」
町山智浩「『チェイシング・エイミー』って映画は、オタク男で恋愛経験ない人が、初めて恋をするって話なんですけど」
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「漫画オタクで、漫画ばっかり描いてる漫画家が、初めて女性を好きになって。その女性は『女性が好きだ』って言うんですけど、そうじゃないことが判明するんですね。それで愛しあうんですけど、その彼女が高校時代に誰とでも寝ちゃうような女性だったってことが分かるんですよ」
「彼は彼女のことを、過去のことなのに『ふざけんじゃねぇよ』と言って責めるんですね。そんな資格はないのに。彼女自身も、『今、あなたを真剣に愛しているのに、何の問題があるの?』って言うのに、結局、責めてしまって嫌われてしまうんですね」
「彼女のことを本当に好きだったら、我慢すれば良いのに出来なかったんですね。これって、この映画のケヴィン・スミスって監督は、実際にあったことで。しかも凄いのは、主演の女の子って、実際に振られた相手なんですよ。元カノを起用したんですよ、自分の懺悔のために。こんな勇気ないでしょ?普通は。会うの辛いでしょ。それをやった凄い映画ですよね」
「この映画、誰のために作られてるかって言ったら、女性のためじゃないですよね。これは、同じようなオタクの人に向けた恋愛映画なんですよ。ずっとそういう映画って、日本にはなかったんですよね。でも、最近、『モテキ』とか『ボーイズ・オン・ザ・ラン』とか出てきて、オタクの男がどうやって恋愛していくかってことを、マジメに考える映画が少しずつ出てきたんですね」


町山智浩「イケてる男女が出てきて、好きだ嫌いだやってる映画もありますけどね…死ねば良いと、思いましたね。その場でコロすぞお前!って思いましたね(笑)」
「顔の良い男がモテモテでどうこうっていうのは、どうでも良いって思ってましたね。でも、色んな映画を観て分かったのは、モテるモテないとか、うまくいく/いかないっていうのは、顔とあんまり関係ないことが分かってきたんですね」
「色んな好みとか主張をゴチャゴチャしている人は、結局、モテないんですよ。こだわりがあって」
「(著書)『トラウマ恋愛映画入門』に出てくる登場人物は、みんなそんなゴチャゴチャ言う人物ばっかりなんですよ。余計なことを言ってるヤツらなんですよ。しかも恋愛をすることによって、相手に譲歩したり相手の女の人の言うことを聞かなければならないってことが、イヤで仕方ない男たちなんです」

町山智浩「独身の人が増えてるっていうのは、実は世界中で問題になってまして。独身の男性が増えてるのは、面倒くさいからなんですね。自分自身を相手に合わせるのが辛いからなんです」
「これも世界的な問題なんですけど、自分自身の楽しみがどんどん増えてきて、自分というものが巨大化してしまったために、他人が入る余地がなくなってるんですよ。どんどん自我が肥大化してるんですね」
「女性も同じで。パンパンの自我同士だから、くっつかない、合体しないですよね」
「ただ、僕の本(トラウマ恋愛映画入門)の中で、阿部定はそうではなかった。大島渚監督の『愛のコリーダ』って映画は、阿部定事件をモチーフに作ってるんですが、藤竜也さん演じる男が、絶対にNoって言わないんです。阿部定の要求を全て鵜呑みにするんです」

「最終的には、『コロして良い?』『…良いよ』って言うんです。これ凄いんですけど、藤竜也を見て『格好良い、惚れた』って言うのは、自分を捨ててるからなんですよね。これは出来ないですよ」
「俺がよくやっちゃうんですが、映画や小説を語っている時に、ディティールで対立することあるじゃないですか。その時、自分が正しいと思ったら、徹底的に闘っちゃうんですよ。こだわりがあるから(笑)」
「そういうことをやるとモテないっていうのは分かってるんですけど、映画を観ても学べないから、またやっちゃうんですけどね(笑)ただ、いっぱい観て『これはダメだ』って分かってると、謝るスピードが早くなるっていう利点がありますね」
「ほとんどが失敗談で、映画監督自身の失敗談を映画にしたものを集めたんですけども、観ていくとたくさん恋愛してたくさん勉強しろってことを言ったら、ヤリ○ン男じゃないですか(笑)そんなにたくさん恋愛してる人って、ダメな人じゃないですか」
「トルストイが言ってるんですけど、『多くの女性を愛した人間よりも、たった一人の女性だけを愛した人間のほうが、はるかに深く女というものを知っている』と。たくさん恋愛している人は、よく分かってないからしてるんだ、と」
「よく分かってないのに、たくさん恋愛しているっていうのは、無免許でいきなり路上に出るみたいなものだから、色んな映画を観てシミュレーションしようってことなんですね」
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映画監督の巨匠も「恋愛」が分かっていない
町山智浩「怪獣とかクンフー映画とか、車が爆発する映画だけじゃなく、僕もおっぱいやお尻の映画好きなんですよ(笑)でも、そこまでなんです」
「ところが、『女性は心を考える』んですね。でも、男って心のことを考えないんですよ、実は。驚きかもしれないけれど」
「実際、俺だけ鈍いのかなって色んな映画を観てて分かったんですけど、巨匠と呼ばれるスタンリー・キューブリックであったり、フェデリコ・フェリーニであったり、ウッディ・アレンであったり、アルフレッド・ヒッチコックの映画であっても、ほとんど男は身勝手で相手の女の人のこと考えてないんですよ」
「しかも、その手の映画って、巨匠の恋愛体験を元にしてるのが多いんです。身勝手で女性をボロカスに傷つける映画ばかりを、世界の巨匠たちは撮ってるわけですよ。尊敬されてる人たちが」
「岡目八目って言葉があって、将棋や碁を打ってる人より、横から見てる人の方が良く見えてて。でも、自分がやると分からなくなるんですよね。巨匠も、自分の恋愛の中では分かってないんですよ。ただ、それを映画にするから、観客には分かるんですね」
フランソワ・トリュフォーの作品にみる「恋愛」
町山智浩「フランソワ・トリュフォーって監督がフランスにいるんですけど、その人は恋愛映画ばっかり作り続けた人なんです。ところがこの人の最後の方の映画で、『隣の女』って映画があるんですけど、その中ですごく重要な言葉があって。『男はみんな恋愛のアマチュアだ』って言葉があるんですね」
![隣の女 [DVD]](https://ecx.images-amazon.com/images/I/4122ESGKPML._SL160_.jpg)
「しかも、これは60歳を過ぎた男性の言葉として出てくるんですね。男はね、ダメなんですよ(笑)あまちゃんなんですね(笑)分かってないって、女性はイライラするんですね」
「どう分かってないかって、凄く分析的なセリフがいくつも出てくるんです。だから、トリフォーって、恋愛分かってるのかなって思ったら、この『隣の女』の試写を観たトリフォーの前の彼女であるカトリーヌ・ドヌーブが『あそこで出てくる教訓的な言葉は、ほとんど私が彼に言ったのよ』って言うんですよ(笑)つまりは、彼も分かってないんですよ(笑)女性に怒られたことをまとめて映画にしてるだけで」
「女性は基本的に、恋愛に関してアマチュアじゃないんですね。男は、大学教授ですらダメなんですよ(笑)」
「アルフィー」に観る恋愛観
町山智浩「『アルフィー』って映画は、高見沢さんとかがいるグループの元になったものです。ここからとってるんですよ、アルフィーってバンド名は」
![アルフィー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]](https://ecx.images-amazon.com/images/I/51ZDEZq-AnL._SL160_.jpg)
「ヒドイ男の話なんですよね。女の子を次々にナンパするんだけど、愛さないんです。『愛したら負けだ』って言うんです。このテーマソングは、『あなたは恋愛を弱肉強食だと思ってるの?』っていう歌なんですね。彼自身も、本当にそう思ってるんです。愛しているって思ったら、降参しなきゃならないんだ、負けなんだって思うから、次々に女性を乗り換えて行くって話なんですね」
「ヒドイ話なんですけど、それで思うのは、何十人とエッチしてるのに、女性のことを全く分かってないんですよ。人の心が全く分かってないんです。これは童貞と一緒ですよね」
「僕の知り合いで、直接のお友達じゃないんですけど、叶井俊太郎って男がいまして、その男は600人とヤったんですね。本も出してるんです」
ダメになってもだいじょうぶ―600人とS○Xして4回結婚して破産してわかること

「600人とヤって、4回結婚して何が分かったんだろうかって思って読むと、何も分かってないんですよ(笑)分からないからこそ、そんな600人もヤリ捨ててきたんでしょうね。分かってないからこそ、出来ることなんでしょうね」
「チェイシング・エイミー」の恋愛観
町山智浩「『チェイシング・エイミー』って映画は、オタク男で恋愛経験ない人が、初めて恋をするって話なんですけど」
![チェイシング・エイミー [DVD]](https://ecx.images-amazon.com/images/I/516rt%2BFWo7L._SL160_.jpg)
「漫画オタクで、漫画ばっかり描いてる漫画家が、初めて女性を好きになって。その女性は『女性が好きだ』って言うんですけど、そうじゃないことが判明するんですね。それで愛しあうんですけど、その彼女が高校時代に誰とでも寝ちゃうような女性だったってことが分かるんですよ」
「彼は彼女のことを、過去のことなのに『ふざけんじゃねぇよ』と言って責めるんですね。そんな資格はないのに。彼女自身も、『今、あなたを真剣に愛しているのに、何の問題があるの?』って言うのに、結局、責めてしまって嫌われてしまうんですね」
「彼女のことを本当に好きだったら、我慢すれば良いのに出来なかったんですね。これって、この映画のケヴィン・スミスって監督は、実際にあったことで。しかも凄いのは、主演の女の子って、実際に振られた相手なんですよ。元カノを起用したんですよ、自分の懺悔のために。こんな勇気ないでしょ?普通は。会うの辛いでしょ。それをやった凄い映画ですよね」
「この映画、誰のために作られてるかって言ったら、女性のためじゃないですよね。これは、同じようなオタクの人に向けた恋愛映画なんですよ。ずっとそういう映画って、日本にはなかったんですよね。でも、最近、『モテキ』とか『ボーイズ・オン・ザ・ラン』とか出てきて、オタクの男がどうやって恋愛していくかってことを、マジメに考える映画が少しずつ出てきたんですね」


モテる男女の共通点
町山智浩「イケてる男女が出てきて、好きだ嫌いだやってる映画もありますけどね…死ねば良いと、思いましたね。その場でコロすぞお前!って思いましたね(笑)」
「顔の良い男がモテモテでどうこうっていうのは、どうでも良いって思ってましたね。でも、色んな映画を観て分かったのは、モテるモテないとか、うまくいく/いかないっていうのは、顔とあんまり関係ないことが分かってきたんですね」
「色んな好みとか主張をゴチャゴチャしている人は、結局、モテないんですよ。こだわりがあって」
「(著書)『トラウマ恋愛映画入門』に出てくる登場人物は、みんなそんなゴチャゴチャ言う人物ばっかりなんですよ。余計なことを言ってるヤツらなんですよ。しかも恋愛をすることによって、相手に譲歩したり相手の女の人の言うことを聞かなければならないってことが、イヤで仕方ない男たちなんです」

独身男性/女性が増えたワケ
町山智浩「独身の人が増えてるっていうのは、実は世界中で問題になってまして。独身の男性が増えてるのは、面倒くさいからなんですね。自分自身を相手に合わせるのが辛いからなんです」
「これも世界的な問題なんですけど、自分自身の楽しみがどんどん増えてきて、自分というものが巨大化してしまったために、他人が入る余地がなくなってるんですよ。どんどん自我が肥大化してるんですね」
「女性も同じで。パンパンの自我同士だから、くっつかない、合体しないですよね」
「ただ、僕の本(トラウマ恋愛映画入門)の中で、阿部定はそうではなかった。大島渚監督の『愛のコリーダ』って映画は、阿部定事件をモチーフに作ってるんですが、藤竜也さん演じる男が、絶対にNoって言わないんです。阿部定の要求を全て鵜呑みにするんです」

「最終的には、『コロして良い?』『…良いよ』って言うんです。これ凄いんですけど、藤竜也を見て『格好良い、惚れた』って言うのは、自分を捨ててるからなんですよね。これは出来ないですよ」
「俺がよくやっちゃうんですが、映画や小説を語っている時に、ディティールで対立することあるじゃないですか。その時、自分が正しいと思ったら、徹底的に闘っちゃうんですよ。こだわりがあるから(笑)」
「そういうことをやるとモテないっていうのは分かってるんですけど、映画を観ても学べないから、またやっちゃうんですけどね(笑)ただ、いっぱい観て『これはダメだ』って分かってると、謝るスピードが早くなるっていう利点がありますね」
「ほとんどが失敗談で、映画監督自身の失敗談を映画にしたものを集めたんですけども、観ていくとたくさん恋愛してたくさん勉強しろってことを言ったら、ヤリ○ン男じゃないですか(笑)そんなにたくさん恋愛してる人って、ダメな人じゃないですか」
「トルストイが言ってるんですけど、『多くの女性を愛した人間よりも、たった一人の女性だけを愛した人間のほうが、はるかに深く女というものを知っている』と。たくさん恋愛している人は、よく分かってないからしてるんだ、と」
「よく分かってないのに、たくさん恋愛しているっていうのは、無免許でいきなり路上に出るみたいなものだから、色んな映画を観てシミュレーションしようってことなんですね」
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