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相棒のプロデューサーが教える「刑事ドラマの作り方」

2013.08.07 (Wed)
2013年08月07日放送の「今やる!ハイスクール」にて、刑事ドラマ「相棒」の松本基弘プロデューサーが登場し、刑事ドラマ作り方について語っていた。

1) 設定の作り方

相棒 season 11 ブルーレイBOX (6枚組) [Blu-ray]松本「設定というのはですね、言い換えればキャラクターということかもしれませんね」

NON STYLE・井上「そうですよね」

松本「元々、2時間ドラマで土曜ワイド劇場の枠をやってたんですけど、その時は水谷さんと『探偵事務所』というシリーズ物をやってまして」

NON STYLE・井上「はい」

松本「原作も無くなりまして、水谷さんと『新しい企画を作りましょう』というところから始まってるんですね」

NON STYLE・井上「はい」

松本「その時、同時に寺脇さんとも別のシリーズ物をやっていまして、そちらもネタが行き詰まったので、たまたま寺脇さんが『自分は水谷豊さんに憧れて俳優になった』とおっしゃったので、くっつけてみようかな、と(笑)」

NON STYLE・井上「そんな安易なことで?」

松本「それで、水谷さんに『寺脇さんとコンビってどうですか?』って言ったところ、『いいね』と言っていただけたので、『コンビ物のシリーズを作ろう』っていうのが、相棒の始まりです」

NON STYLE・井上「寺脇さんからしたら、相棒どころか憧れですよね」

松本「はい」

個性の違う2人の役者をコンビニすると面白いだろうというところから始まった。

『特命係』『杉下右京』の作り方
NON STYLE・井上「刑事ドラマというと、熱血漢が主人公のイメージが強いんですけど、右京さんは、黙々と仕事していますよね」

松本「右京さんというのは、名探偵物にしたい、と。名探偵というのは、変人で嫌われ者。変人で嫌われ者の2人を相棒にするのなら、隅に追いやられた窓際の設定にしたらどうか、ということで特命係ができたんです」

林修「なるほど」

松本「探偵物で行き詰まりを感じたのは、事件が起きてもすぐに関われない。どうしても警察が『お前らはくるな』とシャットアウトしてしまうので」

林修「あぁ」

松本「だから、設定としては刑事にしようと。捜査一課の刑事にすれば、どこで事件が起きてもいけるかな、と」

林修「はい」

松本「最初そう思ってたんですけど、操作一課の刑事にすると、7人ぐらいいて、そのうちの2人でコンビにしてもちょっと上手くいかないなぁと思っていたところ、脚本家の輿水さんが『2人だけのセクションを作ってしまおう』と」

NON STYLE・井上「なるほど」

松本「そういうことで出来たのが、特命係なんですね」

林修「面白い」

松本「面白い展開で、面白いキャラクターが出てくれば、もっと面白くなる、と思って作ったのが『相棒』なんです」

NON STYLE・井上「キャラクターを作る上で、『この要素とこの要素は、絶対に必要だ』みたいなのはあるんですか?」

松本「いや、そんな風に考えたことないですね」

林修「でも、主役の刑事と脇役の刑事って設定は、絶対にするわけですよね」

松本「そうしなきゃいけないと思ったわけではないんですよね」

林修「そうなんですか?」

松本「キャラクターについても、最初から決め込んでいかないんですよ」

NON STYLE・井上「そうなんや」

松本「だから、僕は右京さんという人間がどこに住んでいるかも知らないし、生い立ちも分からないんですね。そういう風に、ゆるくしておいた方が」

NON STYLE・井上「あとで、なんとでもなるんですね」

松本「そうなんです」

2) 事件のネタ選び

林修「よく1週間に1本ずつ、あんなに作れますね」

松本「ホントですね」

NON STYLE・井上「いやいや(笑)松本さん、作ってるんですから」

松本「大変なんですよ。…どうやってネタを決めているかというと、脚本家の先生と、プロデューサーが僕を入れて4人居るんですね。その5人で、『何しようかねー』ってところから始めます」

NON STYLE・井上「雑談的なところから始まるんですか?」

松本「ということもあれば、脚本家さんが『今回、こんなことやってみたいんだけど』って持ってきて、それを中心にやることもあります」

林修「はい」

松本「『ネタ=状況』ではないかと思うんですね」

NON STYLE・井上「んん?」

松本「キャラクターを、どういう状況に置いたら面白いだろうかっていう発想なんですね」

どんな事件にするかではなく、主人公をどんな状況に置けば面白くなるか、ということがコツ。

NON STYLE・井上「一例を教えてくださいますか?」

松本「たとえば…『右京さんと、薫ちゃんが2人で手錠で繋がれていたらどうだろうか?』とか(2014年1月14日放送 season2 第12話『クイズ王』)」

林修「ありましたねぇ。喜多嶋舞さんが犯人の時ですよね」

NON STYLE・井上「詳しい(笑)」

松本「ありがとうございます(笑)」

林修「自分で、刑事ドラマの脚本を書こうと思ったことがあるんですけど、一回も書ききれたことがないんですね。その理由が、少しずつ分かってきました。キャラクターを状況の中で動かして、60分の中で『こいつが犯人か?…いや待てよ』って、視聴者を泳がせて、それを綺麗にまとめなければならない。凄い創作物ですよ」

松本「まぁ、たしかに(笑)」

林修「もう少し教えてください」

松本「はい(笑)…『死刑執行が何人かありました…死刑を執行された時に、ボタンを押す人がいるじゃないですか。刑務官がどういう気持ちなんでしょうかね』とか」

林修「寺脇さんが、北海道行った時の話ですね」

松本「凄いですね(笑)ボタンを押した方が、死刑囚の遺族と会ったらどうだろうか?とか」

林修「前田愛さんが出てくるね」

NON STYLE・井上「ちょっと…これはイントロでは出てこないだろうって回ありますか?」

松本「難しい(笑)…おそらく、全部答えられるとおもいます(笑)」

林修「記憶力良いんで、申し訳ないです」

NON STYLE・井上「ふふ(笑)」

林修「ちょっと突っ込んだ質問ですが…『これだと、犯人出てくるの遅いんじゃない?』とか、逆に『早すぎるんじゃない?』『これだと視聴者、納得しないんじゃない?』ってせめぎあいはあるんですか?」

松本「あります。その繰り返しですね。基本的には、作家さんが書いてきたプロットやストーリーなりを、最初の客である我々が読んで、ダメ出しといいますか、穴埋めを一緒にしていく作業をしていきます」

林修「はい」

松本「ただ、作家さんがやりたいと強く思うことを、きちんとそこは尊重したいと思ってはいます」

林修「だから、どの方が書かれたかによって、ストーリーが明確に違うんですよ」

NON STYLE・井上「観て分かるんですか?」

林修「分かりますよ。詳しいお酒の話が出てきたら、絶対に櫻井さんですよね」

松本「その通りです」

NON STYLE・井上「そうなんですか?」

松本「はい」

林修「安養寺さんは、最初ずっと助監督だったのに、監督に昇格してますよね?」

松本「はい」

NON STYLE・井上「めっちゃ詳しいですね(笑)」

林修「いや、基本ですよ」

NON STYLE・井上「そうなんですか?ドラマってそういう見方します?」

林修「その上の知識が欲しいんですよ」

NON STYLE・井上「もう何百話ってやってますから、『今日の相棒、あんまりやったなぁ』っていうのあります?(笑)」

林修「無くはない…(笑)」

NON STYLE・井上「あるんでしょ?(笑)」

トリックの考え方
林修「トリックも、凄いの色々あるじゃないですか。どういう風に考えるんですか?」

松本「作家さんが、『この色とこの色を組み合わせると、意外な色になるんですよ』っていう、色のトリックの話になったりとか」

林修「それは、『錯覚のトリックの話』ですね(2009年11月11日放送 season8 第4話『錯覚の殺人』)」

松本「はい、そうです」

3) 犯行の動機

松本「ストーリー作りで最も大事なのは、動機ですね。トリックのバリエーションよりも、『なぜこの人は、罪を犯さねばならなかったのか?』という理由ですね」

林修「なるほど」

松本「動機を、それなりに納得のいくものに落としこんでいくっていう作業が、凄く大事です」

林修「はい」

松本「『そんなことでは、罪をおかさねぇよ』って動機ではダメで。よっぽどのことがないと」

林修「はい」

松本「『なるほどね』『仕方ないわね』という動機に落としこんでいく作業は、大変ですね」

NON STYLE・井上「はい」

松本「さっきの例で言えば、『2人を手錠で繋ぐ』という事件では、そこから先をどうするかということで考えると、『この犯人は、一体、何がしたいんだろうか?』と」

NON STYLE・井上「あぁ、なるほど」

松本「『2人をいじめてるわけだから、復讐なのかな?』と思うんだけど、復讐だなというのは誰もが思うことだから、復讐にはしないぞ、と」

NON STYLE・井上「もう1個先に」

松本「はい。じゃあ、何をしたいのか、ということですが、右京さんの目の前で事件を起こすことで、右京さんを苦しめてやろう、と。それも、事件が無差別だと思わせておいて、実は狙っていた人がいた、という風にすると面白いかな、と」

林修「そういう作り方なんだ。全然ダメでしたね」

NON STYLE・井上「林くんは、どういう風に書いてたんですか?」

林修「まず最初に、誰を犯人として疑わせるか、何回ひねって本当のところに持って行こうか、とか」

NON STYLE・井上「難しく考え過ぎなんですよ。騙そう、騙そうって」

林修「そうなんですよ。よくあるパターンで、『身内に犯人がいる』みたいに思わせて、そいつが死体で見つかってどうなる!みたいなのを書くけど、自分で行き詰まるんです」

松本「行き詰まるのは当たり前なんですよ。僕なんか、いつも行き詰まってます。先に無茶苦茶なことを思いついて、どうやったらそれを成立させられるか苦しむんです」

NON STYLE・井上「あぁ」

松本「普通に考えたら、行き詰まるようなことにしないと、お客さんも楽しめないんですよ。『どうするんだ?これ』って思う状況を作って、お客さんもそこで初めて『どうするんだ?』って思うわけですから」

林修「はい」

松本「『きっとこうなるよ』って思う状況を作っても、面白くないですからね。だから、自分たちの首を自分で絞めて、どうやってここから抜け出そうっていうのを、日々やってるんです。それがストーリー作りです」

林修「観ている方も、パターンにハマっていると、安心してみられる部分もありますよね?」

松本「そうですね」

林修「たとえば、捜査一課の3人が『犯人だ』って追っかけたら、まず犯人じゃない」

NON STYLE・井上「止めてくださいよ。相棒みられなくなりますやん(笑)捜査一課の3人が追いかけたら犯人じゃないって言われたから、実は犯人だったって回も作ってくださいよ(笑)」

松本「作りますよ。今、ちょっと挑戦されましたからね(笑)」

林修「そんなつもりはないですよ(笑)」

松本「決めつけられては、面白くないですからね」

NON STYLE・井上「こういう人もいるから、裏切りたいんですよね?」

松本「そうですね」

NON STYLE・井上「林くんは、どれくらい観てるんですか?1話を何回観てるんですか?」

林修「仕事やるとき、基本、相棒をつけっぱなしにするんですよ」

NON STYLE・井上「え?耳で聞きながら仕事するんですか?」

林修「皆さんは、目で観るでしょ?僕は潜在意識に相棒を刷り込んでるんですよ」

NON STYLE・井上「なんじゃこの人(笑)」

松本「はっはっはっ(笑)」

NON STYLE・井上「塾の生徒さんたちに、『相棒観ろ』って言うこともあるんですか?」

林修「それに近いことは言ってますね(笑)先週の相棒観てないと、全く分からない授業やったり」

NON STYLE・井上「はっはっはっ(笑)相棒の中に、受験に役立つことが隠されてるってことですか?」

林修「右京さんの頭の使い方は、受験生も見習うべきですよ」

松本「素晴らしいことを言っていただけますね」

NON STYLE・井上「どの辺のことを見習うべきですか?」

林修「現代文では、本文に書いてないことを平気で答えに書くやつはダメで。右京さんはきっちり観察して、見落としをしないんですよ」

NON STYLE・井上「なるほど。本文に書かれている伝えたいことを」

林修「現場から目を切るのが遅いんです。よく観ているんです」

NON STYLE・井上「執拗に色んなところを観ている、と」

林修「僕のために、相棒を作って頂いているみたいですよ」

NON STYLE・井上「違います!(笑)みんなのために作っています(笑)」

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タグ : 相棒,林修,松本基弘,

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