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村上龍「村上春樹がベストセラーを連発できるワケ」

2013.07.03 (Wed)
2013年06月30日放送の「爆笑問題の日曜サンデー」にて、村上龍がゲスト出演していた。そこで、村上春樹がベストセラーを連発できるワケについて語られていた。

村上春樹作品のテーマ

五分後の世界 (幻冬舎文庫)爆笑問題・太田「村上春樹とは、デビュー当初から、比べられるというか、並び称されて」

村上龍「今はそんな会ってないですけど、前は仲良くて。海外で御飯食べたりしてたんですけどね」

爆笑問題・太田「仲良かったでしょ?」

村上龍「『お互いに違うタイプの作家だなぁ』って思ってたから、付き合えたんじゃないかなって思いますけどね」

爆笑問題・太田「(村上春樹の本は)現状、スゴイ売れるじゃないですか。あれ、読まれました?」

村上龍「最近のは読んでないですけど、海外で人気あるのは分かりますよ」

爆笑問題・太田「分かる?分かんないなぁ…」

村上龍「ふふ(笑)凄く一般的なことを、春樹さんは書いてるから」

爆笑問題・太田「一般的でしょ?つまんないじゃないですか、一般的なことって」

村上龍「一般的なことが凄く興味があって、面白くて自分と同じような悩みを抱えてるんだなぁってことが…」

爆笑問題・田中「共感を呼ぶんですね」

村上龍「共感を呼ぶ人が、世界中にいるんですよ。最大公約数みたいなものが大きいんだと思いますね」

爆笑問題・太田「あぁ」

村上龍「そういうことをやるのは、かなり難しいことですよ」

爆笑問題・太田「難しいですかね?たしかに難しいですね。僕もそれが出来ないんで悩んでるんですけど」

爆笑問題・田中「ふふ(笑)」

村上春樹作品に見る『自意識の揺れ』

村上龍「僕は最大公約数みたいなことは書けなくて」

爆笑問題・太田「書けないでしょうね」

村上龍「自分が『こう思う』ってことしかね。僕は、春樹さんと一番違うのは、(村上春樹の作品には)自意識の揺れとかっていうのがあって。『自分はあの時、あの判断をして良かったんだろうか』とか。それはスゴイ大事だと思うんですよ」

爆笑問題・太田「はい」

村上龍「僕は、そういう自意識の揺れってよりも、その自意識の揺れを吹き飛ばしてくれるものが好きなんですよ」

爆笑問題・太田「そうそう」

村上龍「自意識の揺れにも、凄く大事なところはいっぱいあると思うんだけど、ただ自意識の揺れって、考えてみるとキリがないんですよ」

爆笑問題・太田「うん」

村上龍「答えが出ない」

爆笑問題・太田「若者っぽいですよね、それって」

村上龍「そうですね(笑)」

爆笑問題・太田「凄く」

村上龍「それを吹き飛ばすものって、結構、パワーが必要なんですよ。たとえば、セッ○スとか、戦争とか」

爆笑問題・太田「上手いですか?セッ○ス」

村上龍「まぁ、普通です」

爆笑問題・田中「普通とか要らないですから(笑)」

村上龍「戦争とか、それが良いってことではないんです。ただ、自意識の揺れを吹き飛ばしてくれるものが好きなんですよ。スゴイ音楽とか」

爆笑問題・太田「『村上春樹さんは嫌いだから、悪口言ってるんだ』って思われると困るんだけど。村上龍さんと、ただ村上龍と村上春樹って、浅野ゆう子と浅野温子みたいにカブってるから…」

爆笑問題・田中「W浅野みたいな(笑)」

爆笑問題・太田「比べるのにちょうど良いっていうか。比べるっていうと失礼かもしれないけど。そうすると、全然真逆だって気がするんですよ」

自省・内向的な村上春樹、現実を描く村上龍

爆笑問題・太田「村上龍さんの場合は、現実に今起きていることを…たとえば、『半島を出よ』なんかでも、一時期から経済ってことを抜きでは小説を書けないっていうところで、どんどん取り込んでいくじゃないですか。取り込んでいって、『現実の実態がこうなんだから、どうするか』っていう。意識の揺れなんか、心の中の葛藤から飛び出して、今の社会でどう生きるか、もがいて転んで血だらけになってるんですよ」

村上龍「うん」

爆笑問題・太田「でも、村上春樹さんは、そこからちょっとスーッと上に居て、あんまり殻から出てこないですよね」

村上龍「うん…」

爆笑問題・太田「それはとっても若者らしい悩みだと思うんだけど、僕なんかは、ギャーギャーもがきたいんですよ。だから、共感を感じるのは、今をどうするかってやってる龍さんの方に、共感を持つんです」

村上龍「あぁ」

爆笑問題・太田「龍さんにとっては、春樹さんを見てて、『いいかげん、こっちこいよ!』みたいな」

村上龍「小説家は、それぞれ自立してるんで、春樹さんみたいな人が居たほうが良い…良いっていうと変ですけどね」

爆笑問題・田中「色んなタイプがいるってことですよね」

爆笑問題・太田「意識の揺れだなんだってところと、今まさに日本がアベノミクスだなんだって言ってるじゃないですか。株の上げ下げとか外国の投資家、投機家のさじ加減で一喜一憂するじゃないですか。でも、それと実態とのズレで日本中が混乱してるところじゃないですか?」

爆笑問題・田中「うん」

爆笑問題・太田「安倍さんがやってることと、実際に商店街で商売してる人の違いみたいなものが、W村上との違いとが、俺の中に重なるんですけどね」

村上龍「う~ん」

爆笑問題・田中「言ってること分かりますか?」

村上龍「ちょっと分かります。ただ、たとえばね…あんまり良い例えじゃないかもしれないけど…中央線で暗い顔して佇んでるオジさんがいるとしますね」

爆笑問題・太田「はい」

村上龍「日本はいつも自殺が多いんですけどね。そのオジさんが、なんで暗い気持ちになって自殺まで考えてるかっていうと、意識の揺れなのか、早期退職で解雇されたのか…それは分からないんですけど、僕としては、解雇されたからだと思うんですよ」

爆笑問題・太田「うん」

村上龍「『自分とはなんだろうか…』とか、『10年前のあの事件が…』とかじゃなくて、経済の力っていうのは、僕はひょっとしたら政治より大きいと思ってて」

爆笑問題・田中「うん」

村上龍「政治も経済でだいたい左右されてしまいますからね。だから、アベノミクスも、太田さんの言う通り、期待値だけで最初、成長していたわけですけど」

爆笑問題・太田「うん」

村上龍「だから、期待がちょっと裏切られると、かなり危ういんですよ」

爆笑問題・太田「はい」

村上龍「経済が成功すると、政治的な安倍内閣の支持率も上がっていくんです」

爆笑問題・田中「はい」

村上龍「プーチンとか、スゴイ政治家ですけど、天然ガスでロシアが大儲けして、ロシアの国民の年金とかが整備されたら、プーチン人気がブワーって上がっていくわけじゃないですか」

爆笑問題・太田「はい」

村上龍「どんなに立派で高潔なことを言ってたりしても、経済的にその国民が窮乏していくと、政治家は必ず人気無くなっていくんですね」

爆笑問題・太田「うん、うん」

村上龍「テキトーでも、国民の生活が良くなっていくと、政治家の人気は上がっていく。ただ問題は、日本の基本的な生活が良くなっていった、その後。その後のことをどうするかってことは考えなきゃいけないんですけどね」

爆笑問題・太田「エジプトなんかも、もうすでに経済がダメだと。あんだけ大革命だって、大喜びしていたら、もうデモだなんだってなってるからね。そういうのは、現実の強さっていうのは感じますけどね」

村上龍作品に共通してみられる特徴

爆笑問題・太田「龍さんはいつもね、『コインロッカー・ベイビーズ』も『69 sixty nine 』もそうなんだけど、常に今ある世界をぶち壊そうっていうテーマでしょ?」

村上龍「そうですね」

爆笑問題・太田「そういう意味では、成長してないですよね。そういう意味では。考えてることは」

村上龍「それは、知識は増えてるんだけどね(笑)」

爆笑問題・太田「あの手この手にはなってますよね」

村上龍「実際に破壊したら犯罪者になっちゃうけど、小説に書く分にはね」

爆笑問題・太田「そうだと思いますよ。ただ、小説内でも、たとえば『コインロッカー・ベイビーズ』も最後はテロですよね?でも、『半島を出よ』の時なんかは、その国のお金が信頼されれば、外国とも商売できちゃうんだぜ、みたいな」

村上龍「うん」

爆笑問題・太田「ちょっとずつ、成長がみられるんですよ」

爆笑問題・田中「なんなんだよ(笑)」

爆笑問題・太田「本当に生意気な比較で申し訳ないんだけど、俺も最初はテロだと思うのね。最初に考えつくことは、現状を変えようと思ったら、ぶち壊すしかないだろう、と」

爆笑問題・田中「うん」

爆笑問題・太田「でも、これは無理だな、と。社会ってそんなヤワじゃない。一人だけじゃとても国家転覆なんかできないって時に、政治の主流の方に入って、うまく騙して、上から変えていくってことしかないんじゃないか、と。徐々にあの手この手のやり方が変わっていくのが、まさに龍さんのやり方が、ちょっとずつ成長しているというか」

村上龍「うん…あとね、コンピュータとかIT、新しいツールができると、若い人にとって有利なんですよね。それを使いこなすのは若い人たちだから。そういった意味でも、小説のモチーフは変わってくるし」

爆笑問題・太田「うん」

村上龍「あと、日本国民全体の民度というか、知識が増えるとまた変わってくると思うんですよね。今、民度は相当上がってると思うんで」

爆笑問題・太田「日本人の?」

村上龍「えぇ。昔に比べたらですよ。そんなにみんなバカじゃないですよね」

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