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町山智浩、映画『ズートピア』のテーマはディズニーが一貫して描いてきた人種差別などの「脱ステレオタイプ」の物語だと指摘

2018.06.09 (Sat)
2016年4月26日放送のTBSラジオ系のラジオ番組『たまむすび』(毎週月-金 13:00-15:30)にて、映画評論家の町山智浩が、映画『ズートピア』のテーマはディズニーが一貫して描いてきた人種差別などの「脱ステレオタイプ」の物語だと指摘していた。

ズートピア


町山智浩:これは僕もよくやっちゃうんで、本当に危険なことなんですけど。

赤江珠緒:はい。

町山智浩:大体、「なに人はナントカだ」っていうこと自体が、大体通用しないですよね、本当はね。

赤江珠緒:そうですよね、本来はね。

山里亮太:たしかに。

町山智浩:そんなもんで、なにも決まらないですよ。

赤江珠緒:日本人の中でも、バラバラなのにね。

町山智浩:そうなんですよ。たとえば、アメリカンインディアン、先住民っていうのはいますけど、先住民の身体的特徴っていうのは、もう全くかけ離れているのに、全部ひとくくりにしていたりしますよね。

赤江珠緒:うん。

町山智浩:で…ただ、この映画はそのことを物凄く突き詰めて考えていて。特に、『ズートピア』っていうのは本来だったら敵同士だったり食ったり食われたりする関係の動物同士が、仲良く暮らしているんですけど。これはまさに、アメリカを言っているんですよね。

赤江珠緒:うん。

町山智浩:アメリカはたとえば、なんだろう…中国人もチベット人も仲良く暮らしていますよ、アメリカは。

赤江珠緒:ああ。

町山智浩:ウクライナとロシアも戦争してるけど、ウクライナとロシアって、アメリカだと同じ東ヨーロッパ系のレストランとか、食料品店で働いたりしてて(笑)隣人ですよ。

赤江珠緒:そうか、入り混じっているわけですもんね。

町山智浩:ね。あと、ユーゴスラビアが内戦になった時に、セルビアとクロアチア人が殺し合いをしましたけども、あの時セルビアとクロアチア人同士で結婚している人とかがみんな、アメリカに逃げてきましたよね。

赤江珠緒:うん、そうか。

町山智浩:アメリカに行ったら、セルビア人もクロアチア人も友達で隣人なんですよ。

赤江珠緒:ああ。

町山智浩:アルメニア人とトルコ人も仲間なんですよ、アメリカに来たら。だから、この『ズートピア』っていうのは、アメリカそのものを一種、象徴していて。

赤江珠緒:うん。

町山智浩:で、セリフの中で出てくるんですよ。「もしあなたがキツネに生まれて、ゾウになりたかったら、ゾウにでもなれるのがこのズートピアなんだ」って言うんですよ。

赤江珠緒:へぇ。

町山智浩:これは、アメリカの国是みたいなもんなんですよね。「なりたいものになれるんだ」と。

赤江珠緒:へぇ。

町山智浩:で、昔、ヨーロッパはお百姓さんに生まれたら、一生農民になるしかなかったのが、アメリカに行ったら何にでもなれたわけですからね。

赤江珠緒:はい。

町山智浩:だから、「実際にそうじゃなくても、そういう風にしようよ」っていうのが、こういう映画なんですよね。

赤江珠緒:うん。わりと根源のメッセージですね。

町山智浩:ディズニーは、昔からやっているんですよ。

山里亮太:昔から?なにかありましたっけ?

町山智浩:そうなんですよ。『わんわん物語』って、1955年にディズニーが作っているでしょ?

わんわん物語


赤江珠緒:わんわん物語?

町山智浩:あれは、主人公はコッカスパニエルのレディっていう、血統書付きのコッカスパニエルなんですよ。で、コッカスパニエルっていうのは、イギリスが原種で、イギリスから来た、いわゆるWASP(ホワイト・アングロサクソン・サバーバン)を意味しているんですよ。

赤江珠緒:ああ。

町山智浩:で、それが全く親のわからない浮浪児の男の子と結婚するっていう話ですよね。

赤江珠緒:はい、はい。

町山智浩:で、子供を作るっていう。あれは要するに、「なに人でもない、アメリカ人っていう新しい民族が生まれるんだ」っていう話ですよね。

赤江珠緒:ああ、そうかぁ。

山里亮太:そんな気持ちで見てなかったよ、全然。

町山智浩:トランプっていう浮浪児の男の子の仲間の犬の名前は、ボリスっていう名前で。あれはロシア系ですよね。

山里亮太:ああ。

町山智浩:それで、ペドロっていうのがいて、プエルトリカンなんですよ。で、イタリアンレストランに行くんですよ。

赤江珠緒:ああ、そっか。

町山智浩:だから、WASP以外の人たちとWASPが混じりあってアメリカを作っていくんだよっていう話が、『わんわん物語』だったんですよ。

赤江珠緒:へぇ。

町山智浩:だから、ディズニーは一貫してそれをやっているんですけどね。

赤江珠緒:うん。

町山智浩:だからこれ、ステレオタイプでやるっていうことは、凄い危険なんだということを言っていて。

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