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伊集院光×山田太一、未知のことばかりで失敗の多い人生について対談「エラーのない人生はつまらない」

2015.08.29 (Sat)
2015年8月28日放送のTBSラジオ系のラジオ番組『伊集院光の週末TSUTAYAに行ってこれ借りよう』(毎週金 15:00-15:20)にて、脚本家・山田太一がゲスト出演し、81歳を迎え、老年となった今だからこそ分かる人生の楽しさについて語っていた。

夕暮れの時間に
夕暮れの時間に

伊集院光:来ていただけると聞いてから、「何を訊こう?」って思ってる内に、訳が分かんなくなってきちゃって。

山田太一:ふふ(笑)

伊集院光:失礼かもしれないけど、漠然とした質問です。

山田太一:ええ、ええ。どうぞ(笑)

伊集院光:今、81歳ということですが、80歳ってどうですか?

山田太一:いやぁ、他人事みたい(笑)

伊集院光:ああ、他人事みたい?

「知らない人生」を生きる人間

山田太一:うん。70歳になった時にね、「ああ、直に死ぬな」って姿勢でいたけども、死にそうにない(笑)それで、80歳になったんで、70歳になった時の洗礼を思い出して。

伊集院光:はい。

山田太一:「そんな風に、先走って死んじゃうなんて決めなくても、まあ良いか」っていう(笑)

伊集院光:僕、今、47歳なんですけど、30歳の時も40歳の時も、50歳が近づいてきたなって思うときも、大体、落ち込んでるんですよ。

山田太一:そういうもんですよね(笑)

伊集院光:先輩方から「そういうもんです」って言われると、凄いホッとするんです。

山田太一:そういうもんですね。外国の作家ですけど、ミラン・クンデラっていう人がね、「人間っていうのは、いつも知らない人生を、知る前にその人生を生きなければならない」と。

伊集院光:うん。

山田太一:恋愛というものがなんだか知らない内に恋愛をしなきゃならなくなる、結婚も結婚するときに結婚の現実なんか知らないですよね。老年も、みんな老年を知らないで老年になってしまうっていう。

伊集院光:はい、はい。

山田太一:「この宇宙は、未熟の宇宙だ」って言い方をしているんです。

伊集院光:はい。

山田太一:そういう「知らない」ってことが、生きる活力にもなっているのかなって思いますけどね。

伊集院光:まさにそこが聞きたいところで。40歳の時の脚本にも、80歳の人が出てくるわけじゃないですか。

山田太一:はい(笑)

伊集院光:そうすると、それなりに、普通の人よりは80歳について想像はしてる仕事ですよね?

山田太一:そうですね。

伊集院光:でも、その自分の体験としての80歳にきた時に…

山田太一:それは違いますよ、やっぱり。

異性への関心がなくなる老年

伊集院光:80歳になって、面白いことってなんですか?

山田太一:70歳からそうだけど、女性にモテることへの関心がなくなってしまって(笑)

伊集院光:なくなるのは良いこと?悪いこと?

山田太一:良いことだと僕は思いますね。80歳くらいになって、「まだ俺はモテんのかな?」なんて思ってるのは、みっともない(笑)

伊集院光:ふふ(笑)なるほど。逆に言うと、10代、20代、30代とかでも一番の感心事で、しかも僕はなかなか得意ではなかったところが、もう関係なくなるっていうのは、ある意味良いですよね。

山田太一:いやぁ、気楽になりますよ。それでね、女の人の人柄の良さなんかが見えたりもします。

伊集院光:ああ、老年になってくると、そこ見えてきますか。

山田太一:ええ。やっぱり、若い時は形が良い人、セクシャルな人を不随筋みたいに…

伊集院光:もう離せない、それは(笑)

山田太一:それがとれちゃうのね。その人の付き合いの良さとか、色んなものが「ちょっと見方が変わったな」っていう。「綺麗だって、なに?」って感じになってくるんですよ。

阿部哲子:どっちが楽しいでですか?

山田太一:両方楽しいな、僕は。

伊集院光:「両方楽しい」って台詞は、モテてないとなかなか言えないですよ(笑)俺、あんま楽しくなかったですよ。10代の頃(笑)

山田太一:いやいや、僕はそんな欲がないからそうなんでね(笑)

伊集院光:そうか、そこがフラットになると、異性も同性も本質が見えてくるかもしれないですね。

エラーのない人生などつまらない

山田太一:それから、木下晋さんっていう画家がいらっしゃって。鉛筆で細密画を描かれるんですよ。その方は、老人ばっかり描かれるわけですよ。特に、老女を。

伊集院光:はい。

山田太一:そのシワたるや凄い細かさなんですよ。それで、「どうしてこんなにテクニカルで上手な方が、綺麗な女性を描こうと思わないんですか?」って言ったら、「シワのない肌はつまんない」っておっしゃったんですよ。

伊集院光:良い言葉だね。

山田太一:あるときに、ちょっと意表を突かれてね。「なるほど、この人、シワが1つ2つあるから良いな」っていうね(笑)

伊集院光:それ、僕がめちゃめちゃ共感入ってると思うのは、近いところで言うと、「CGの美女ってつまんない」んですよ。

山田太一:つまんないですね。

伊集院光:意外なところにホクロがあったりしないから。作者の人が意図したホクロ以外ないから。火傷の痕もないから、つまんないんですね。

山田太一:つまんないんですね。

伊集院光:もっと言いますと…グッと飛躍しますけど、今、パソコンのグルメサイトがいっぱいあるでしょ?それで、ベスト10のところから食べに行くと、絶対に美味いんです。でも、つまんないんです。

山田太一:ああ、そうか。

伊集院光:「よくぞコイツ、これで店持ったな」っていうとんでもないところに当たらないんです。

山田太一:それは当たらないでしょうね(笑)

伊集院光:よく店を持ってるヤツが、「ここにパイナップルを入れたね」ってヤツに合わないんです。

山田太一:うん。

伊集院光:だから、エラーのない人生は良いかもしれないけど、つまらないんです。

山田太一:つまんない。その通り(笑)

伊集院光:シワのない女性を描いてもつまらない、見てもつまらないんですね。

山田太一:そう。

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